農水省「“米の将来価格”に関する実務者勉強会」非公開で開催、先物含め『将来価格の動向を把握するための様々な手段を検討する場』
農林水産省は8月2日、「米の将来価格に関する実務者勉強会」を非公開で開催した。
議事概要(後日公表)と資料はウェブサイトに公表する。現物市場と同様、事務局は新事業・食品産業部の商品取引グループが務める。
開催要領では、安定した価格・数量での取引を実需者が要望している一方、価格を含めた事前契約拡大などが課題となっている、と整理。
その上で、「“米の将来価格”が分かれば事前契約取引の締結に際して価格決定の一助となるほか、生産者が需要に応じた生産を行えるようになることが期待される」とし、各関係者が米の将来価格を勉強・研究するための「自由な場」を設けたとしている。
会合では(公財)流通経済研究所と(株)ぶった農産が現物市場の制度設計を説明したほか、三井物産(株)が小麦先物の活用事例を紹介した模様。勉強会の委員は以下の通り(五十音順・敬称略)。
▽飯島悠希(飯島米穀(株)常務)▽井上貴利((株)井上農場専務)▽北本健一郎((株)吉兆楽代表)▽佐藤拓郎((株)アグリーンハート代表)▽佐藤正志(新潟ゆうき(株)代表)▽妹尾次郎(千田みずほ(株)商品部長)▽田口健一郎(たぐち農産(株)代表)▽平沢愛一郎(全集連常務)▽藤井暁(全農米穀部次長)▽前田智行(日本ゼネラルフード(株)名古屋本社営業本部食品流通事業部長)▽吉田宏(わらべや日洋食品(株)執行役員)。
資料によると、豊凶変動と価格変動を「米の生産・流通におけるリスク」として挙げ、米の事前契約研究会のデータを抜粋しながら「将来価格の目途がない中、価格を含めた事前契約の拡大などが課題」と整理。その上で、将来価格の動向を把握できれば需要に応じた生産、事前契約の際の取引価格決定の一助になるほか、JAグループにとっても概算金決定の一助になる――などと、将来価格把握の効果をまとめた。
また、資料では商社によるアメリカ産とうもろこしの調達事例を紹介した。飼料メーカーがシカゴ先物価格を参照して決めた注文価格を踏まえ、商社が自己調達分も含めて手配。この時点で飼料メーカーは先物の「将来価格の発見機能」を活用しているとする。また、商社の自己調達分(取扱総量の約1割)は、商社がシカゴ市場の先物取引を活用してリスクヘッジしているなど、先物の機能を整理した。
農水省は本紙・米麦日報に対し、「価格も含めた事前契約拡大が課題となるなか、米の将来価格を把握できれば需給シグナルを受けた生産などに繋がる」と改めて語った。
「コメ先物復活の布石と捉えられかねないのでは?」との問いに対しては、「もちろん、将来価格を知る手段の一つには先物も含まれるが、あくまで“one of them”だ。この勉強会は先物だけではない様々な手段の有用性をニュートラルに勉強・研究するのが目的である点は強調したい。2つの現物市場についても設計によっては先渡取引が可能となるため、それも将来価格を知る手段の一つとなりうる。そのため、今回は流通研とぶった農産からそこを中心に話してもらった。まずは、将来価格の動向を把握することが有用か否かを検討し、有用であればどういった手段があるかを検討し、その後、それぞれのメリット・デメリットを考えていきたい」と意図を説明した。
〈米麦日報2023年8月9日付〉