食品残渣の抽出後コーヒー粕を麹化・製パン利用に成功、「ポリフェノールたっぷりパン」開発/フジワラテクノアート×ネスレ日本×栄屋製パン

「ポリフェノールたっぷりパン」
「ポリフェノールたっぷりパン」

43の企業・団体が参画する(一社)アップサイクル(森原洋代表理事)は11月28日、(株)フジワラテクノアートと共に食品副産物をアップサイクルする「Enz Koji」プロジェクトの開始を発表した。その第1弾として、ネスレ日本(株)(深谷龍彦社長)、(株)栄屋製パン(神奈川県海老名市、梅田高嗣社長)が協力し、抽出後のコーヒー粕を麹化し、それを活用した製パンに成功。「ポリフェノールたっぷりパン」(プレーン・フルーツ、各税込650円)として、渋谷区の「ネスカフェ 原宿」にて数量限定で販売開始した。

(左から)森原代表理事、藤原副社長、吉岡専務、瀧井ディレクター
(左から)森原代表理事、藤原副社長、吉岡専務、瀧井ディレクター

同日、メディア発表会を同カフェで開催。プロジェクト第1弾のスキームは、ネスレ日本が供給するコーヒー豆の抽出後の残渣を、フジワラテクノアートが麹化(Enz Koji)した後、栄屋製パンが製パンを担う。「循環型社会の実現に貢献していきたい」(森原代表理事)。

フジワラテクノアートの藤原加奈副社長は、「当社は醸造分野で長年、麹造りの技術を蓄積してきた。この技術を活用し食品副産物をアップサイクルしようと、プロジェクトを立ち上げた」と背景を説明。国内の年間コーヒー粕排出量は約85万tにのぼり、そのほとんどが廃棄される現状から「当社は2023年に財団に参画し、メンバー同士で有効活用できないか討議してきた。麹にすることで酵素が生まれ、コーヒー粕を物質変換させ、価値のあるものへ変えていきたい」と意気込んだ。

続いて、ネスレ日本サステナビリティ&ステークホルダーリレーションズ室の瀧井和篤ディレクターは、「当社はコーヒーやカカオ栽培から商品製造、パッケージング、流通、消費の全てのバリューチェーンでサステナビリティを重視した取り組みを進めている。コーヒーに関しては、国内の3工場で100%再生可能エネルギーを使用するほか、抽出後コーヒー豆はエネルギーとして再利用している。今回はその新たなと取り組み」とした。さらには、ポリフェノールは1日当たり約900mgを摂ると良いとされることを紹介し、「コーヒーを飲むだけでなく、『Enz Koji』を通じてコーヒーポリフェノールがたっぷり摂取できる」とアピール。

栄屋製パンの吉岡謙一専務取締役は、「Enz Koji」を活用した際の製パン性や、パンの特徴を説明した。まず同社の歴史について、「大正12年に創業し、地域ベーカリーとして学校給食でお馴染みだったが、現在はBtoBを“主戦場”とし、首都圏の電鉄系百貨店向けやサンドイッチ用パンをOEM受託している」と紹介。加えて、製パンで発生するパンの耳など残渣を活用すべく、クラフトビール事業も展開している。「モルトの一部をパンの耳で代替してクラフトビールにする取り組み。22年の発売以降、好評だ。今年2月には自社の醸造所を設立し、『フードロス』をメインテーマとした醸造所は国内では初めて」と話した。

「Enz Koji」には、「酸味や香りがマイルドだと感じた。かなり量を入れても食味を維持できる」特徴があるとし、通常の製パンにおけるコーヒー添加量は対粉で数%だが、今回は15%も添加したという。一方で、「通常の生地よりゆるみが生じたため、加水調整した。ボリュームの出にくさもあり、焼き菓子に近い菓子パン系を選定した」という。また、通常の製パン製造ラインに大きな変化を加えなくても、加工性を維持できたという。

今後については、研究により食パンや焼・和菓子への応用にも期待を込めた。

〈米麦日報2024年12月2日付〉

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