神明HD×ウォーターセル資本提携、アグリノートを改善・強化

神明HD 藤尾社長(左)とウォーターセル 渡辺社長
左から藤尾社長、渡辺社長

農業界の課題解決し持続可能な農業実現へ

(株)神明ホールディングス(藤尾益雄社長)は3月14日、営農支援アプリ「アグリノート」の開発・運営など農業プラットフォームを展開するウォーターセル(株)(渡辺拓也社長)との資本業務提携を発表した。神明HDがウォーターセルの株式を取得、第2位の株主となる。神明HDが米や青果物の生産/仕入れ/担い手育成の川上で蓄積した知見と、ウォーターセルが培ってきた情報プラットフォームを融合し、アグリノートの改善・強化を図る、また、農業現場の課題解決を支援するシステムの共同開発を進める。

同日に記者会見を開き、両社が業務提携の狙いを語った。

〈神明HD・藤尾社長〉両社の強みを生かして、共同開発を進めて農業界の課題を解決し、持続可能な農業の実現に向かっていきたい。両社が連携することで、生産者が農業へのモチベーションをアップさせ、農業未経験者でもできる農業にしていく。それをウォーターセルと実現していくことが目的で、生産者の経営改善、持続的な成長を支援していく。

〈ウォーターセル・渡辺社長〉日本の農業のデジタル化を進めることで、持続的農業の実現に貢献したい。大規模化への対応、環境負荷低減対応など農業現場で深刻な課題が多い。その課題解決に向けてデジタル化が必要との認識を神明HDと共有し提携に至った。具体的な内容はこれからになる。提供価値として目指したいのはアグリノートに農業生産の効率化、人材育成、収支管理などの改善機能を強化するなど、農業現場の課題解決に一緒に取り組んでいきたい。

〈川上事業を強化、今期売上高は5,500億円到達見通し、神明単体は2,000億円〉

神明HDの藤尾益雄社長は、(株)ウォーターセルとの資本業務提携発表記者会見で、神明HD、(株)神明の業績・今後の方針に言及。神明HDの今期(2025年3月期)売上高は5,500億円に達する見通しで、2025年までの目標(売上高5,000億円)は達成確実だとした。神明単体の売上高は2,000億円弱(うち米は1,800億円程度)での着地見通しで、前期(2024年3月期)1,400億円(米は約1,200億円)から大きく伸長。

しかし、取扱量前期(約50万t)から▲7~8%。「“米騒動”で単価が大幅に上昇した。単体・連結ともには過去最高業績・利益だが、米の取扱量が減っている。青果も量が減っている。これでは決して未来に繋がらない。たくさんの米・野菜を仕入れて販売することで成長していく。農業を川上戦略に取り組み、農業を活性化しないと課題を解決できない」。

2025年の目標は「神明グループが農業のプラットフォーマーになる」。JAグループや自治体、行政とも連携を深め、得意先への安定供給に注力する考え。同時にスマート農業の推進などにより、限られた農業従事者数の状況下で生産力の確保を進める。新中期経営計画はこれから策定するが、長期的には30年売上高1兆円を目指す。「1兆円規模を目指す気力でやらないと日本の農業を守れない」(藤尾社長)。

4月には神明HDに「川上戦略事業本部」を立ち上げる。人材育成や営農管理、農機具の販売・リースなど、大規模化支援などに取り組む。契約栽培を拡大するための資金支援、農家収入増に向けた水田での太陽光発電やカーボンクレジット取引などにも積極的に取り組む考えだ。

「神明グループには米だけでなく、きのこや青果など川上に近い事業もあり、結びつけていく。グループの人・物・金は、川上につながるところにだけ投資していくという決意でもある。これで日本農業を守り、グループも成長していく。農業のプラットフォーマーを目指す戦略だ」。

2023年に神明とのりす(株)と共同出資で立ち上げた、新規就農者増加・大規模生産法人育成が目的の(株)神明アグリイノベーションでは、昨年は麦生産にトライ。今年は米の試験生産に取り組み、8年産から本格生産を開始する見込みだ。今春にはライスセンター(加須市)が稼働する。
〈米麦日報 3月18日付〉

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