今秋、黒ごま値上げへ

〇原料格差で、白・黒製品の「同一価格」に限界

原料ごま価格は一昨年より乱高下を繰り返しながら高値相場を形成しており、特に黒ごま、金ごまに関しては、供給産地が限定されていることから歴史的な高値をつけ、現在も黒ごま約3000ドル、金ごま約4000ドルと高値横ばいで推移している。さらに一層の円安が原料調達コスト高に追い打ちをかけている。加工ごまメーカーでは、今春の業務用製品に続いて、今秋家庭用製品で黒、金ごま製品を中心に価格改定に踏み切る。家庭用製品で白ごま製品と黒ごま製品は従来同一価格で販売されてきたが、「黒ごまと白ごまの原料価格は1tあたり1000ドルもの差がついている。白、黒同一価格で販売できない」(メーカー)とし、別々の価格での販売に舵を切る。

真誠は9月1日出荷分から家庭用黒ごま製品の価格改定を行い、建値ベース平均で約7%値上げする。同社は値上げの背景について、「今年の新穀相場ではかつてないほど白・黒の原料価格差が生じ、進行し続ける円安と相まって従来のように家庭用製品で白・黒を同価格で販売する事が困難という結論に至った」としている。9月から値上げするのは同社のほか、マコト、和田萬商店、10月からはカタギ食品が値上げする予定。その他のメーカーも、値上げを検討しているところが多く見られる。

ごま業界は、加工ごまメーカー、ごま油メーカーともに一昨年来の原料ごま価格の高騰と為替の円安に苦しめられてきた。各社とも数回にわたって値上げを実施も、浸透は遅れてきた。そのため収益が大きく悪化し、業績は2年連続で大幅減益を余儀なくされている。原料価格は食品白ごま、搾油ごまは今年に入りやや軟化したが、円安で相殺。中国をはじめ世界のごま需要が旺盛なことから、相場は底堅い動きが予想される。

搾油用については、「食品用と値差が狭まっている。食品ごまの価格が高く、搾油用の主要産地であるアフリカ諸国で食品ごまを生産する農家が増えている。搾油ごまの価格を持ち上げる懸念がある」(商社)。

さらに、ごまは世界の生産量400万tとマイナークロップであり、主要産地の天候要因による数量減などネガティブな情報があれば一気に急騰する可能性もあり、予断は許せない。

世界最大の輸入国である中国の動向も注視される。14年は55万tを輸入し、今年も1~4月で32万tを輸入しており、「今年は70万tを超えてもおかしくない」(商社)という。

中国をはじめ世界のごま需要が拡大する中、日本は厳しい残留農薬基準が足かせとなり、世界のごま争奪戦において厳しい戦いを強いられている。産地開発も急務であり、商社では海外の輸入国にとって重要な産地であるインドからの輸入再開の必要性を強調している。