今期つゆ市場、「価値訴求」キーワード
今期のつゆ市場は、価値訴求がキーワードとなる。つゆカテゴリーの主力である濃口醤油ベースの濃縮つゆは、常備調味料の地位を不動にしているが、それだけに競争が激しく、しかも飽和市場化していることから、価格の低下が最も重要課題だ。トップシェアグループの一つ、キッコーマン食品は今期、価値訴求を前面に打ち出し、容器、中身のリニューアルで販売価格の上昇を図る。また他社も個食・少人数用のストレートつゆや鮮度保持容器入り、減塩タイプなど価値訴求を展開する。
表(紙面に掲載)に当社の契約しているPOsデータ(つゆ・たれ類)から、過去4年の上位100品目の分野別品目数と販売金額シェアの推移を示した。最も目立つのが鍋つゆの増加だが、それに対して濃縮つゆの減少も対照的だ。上位100品目の売上高は全体の6割を超える程度だが、それでも15年の濃縮つゆのシェアは13年に比べ5ポイント近く低下しており、縮小は明らか。ちなみに鍋つゆ、ラーメンつゆを除いて計算しても濃縮つゆのシェアは低下している。
濃縮つゆが減少傾向に陥った理由はいくつかある。開発当初は簡便調理や汎用性から順調に成長したが、ここ数年、普及率が上昇し常備調味料の地位を得たことで、全体の需要が頭打ちから微減に転じた。また濃縮つゆは夏の麺用に加え、シーズンを通した調理需要が重要で、どうしても大手に偏る傾向がある。しかも醤油、だし、食酢など調味料メーカーが参入し、断トツのメーカーがいない混戦状態になっていることで、競争の激化、さらに販売価格の低下につながった。醤油に代わる特売商品になっていることも価格低下の要因だ。したがって、量的には微減ながら、金額ベースでの減少幅が大きいことが最大の課題となっている。
こうしたことからトップシェアグループの一つ、キッコーマン食品は今期、主力の「本つゆ」をリニューアル、『濃いだし本つゆ』を新発売した。濃縮度を4倍に高めることで汎用性を強化、出汁などの品質を向上し、さらに容器も使い勝手を高めた。こうした価値訴求により、売価は1?で30円以上上昇したケースもある。
シェア上位の他社にとっても濃縮つゆは市場が大きいだけに、競争が激しいといっても乱売は避けたいところ。Mizkan、ヤマサ醤油、ヤマキなど上位各社は独自の切り口によるメニュー提案を強化し、販売価格維持の方向で臨んでいる。だし原料などの原料価格が高騰している中では、丁寧な販売が必要との判断だ。
一方、鮮度保持容器入り(ヒゲタ醤油の濃厚つゆ、イチビキの生だしつゆ)や減塩タイプ(ヤマキ、盛田など)などでの価値訴求を行うメーカーもみられる。ヤマキは白だしに傾注しスープのメニュー提案に力を入れている。
またここ2~3年、大手、中堅メーカーから提案が盛んな個食・少人数用パウチ入りは、前述の濃縮つゆの市場飽和と価格軟化の対応策の一つでもある。オリジナリティーのあるパウチ入り製品の開発によって市場の活性化と単価アップを図りたいというメーカー側の考え。具体的には具材入り、味やだしのバラエティー化、さらに容器の改善、濃縮タイプで汎用性の付加などだ。
パウチ入りは夏季の麺用に特化する傾向があるが、マンネリ化しやすい夏の麺を楽しくすると同時に、バラエティーな味が個人対応できることも価値となる。今期も各社から様々な提案がなされており、天候によっては大きく伸びる可能性がある。