需要拡大へ魅力を発信 ごま業界が本腰 機能性や使い方を訴求
ごま業界では、組合や個々の企業でごまの良さを伝える活動に本腰を入れている。全国胡麻加工組合は6月に開催した総会で、ごまPR媒体の作成や、ごまの機能性といった科学的探究課題の抽出などに取り組むことを決めた。
ごまは古くから体に良い食品として知られる。数十年前から科学的な研究が進み、抗酸化成分「ゴマリグナン」(セサミン含む)などの機能性成分が明らかにされてきた。ただ、業界としての発信力が十分ではなく、一般的に「ごまは体に良い」という漠然とした認識にとどまっているのが現状だ。ごま業界では、ごまの機能性やおいしさ、使い方等を発信し、需要の拡大を図る。
昨年10月にごまの健康効果についてテレビ番組で取り上げられ、ねりごまを中心に販売が伸び、需要の底上げが図られた。メーカー各社では、需要拡大につながる情報発信の重要性を再認識しながら、「せっかく購入してもらっても、家庭で最後まで使い切ってもらわないと意味がない」(メーカー)とし、調味料や惣菜に加えることでおいしさがアップするなどの簡単な使い方提案に力を入れている。
付加価値の高いねりごま製品については、加工ごまメーカー、ごま油メーカーともに強化している。分離した油分を混ぜやすいスパウトパウチタイプの新製品の投入が目立つ。また、添加物不使用で油分と分離しにくい点や、なめらか仕上げの訴求も増えている。スパウトパウチについては、大手量販のPBも昨年から登場している。
付加価値製品では、有機も改めて注目されている。有機はカタギ食品が強みを持つが、その他の一部メーカーも、ラインアップを増やしている。今年に入り、大手量販店でイオンが新会社を設立し、オーガニック小型sM事業の展開に乗り出した。また、ライフコーポレーションも6月25日に、美と健康をコンセプトにした新業態「BIO‐RAL 靭店」を大阪市にオープンした。同店のごま売り場=写真=には、PBを含む有機ごまが充実していた。量販でオーガニックをテーマにした店やコーナーが出てきたことから、有機ごまの需要も高まりそうだ。
原料面では、白ごまは軟化し落ち着感が出ていることから、高値在庫の消化は進んだと見られる。しかし、メーカーによりその程度は様々。依然として高値在庫を抱えたところも多くあり、採算面での厳しさは続いている。
さらに、黒ごまが高値のまま推移しており、黒ごまと白ごまの価格差は1tあたり1000ドル以上開いたままだ。「黒ごまの市場は10年前のピーク時には2万t超だったが、現在では約半分の1万t前後に縮小している」(メーカー)。産地が限られる黒ごまの価格は今後も高値推移が予想され、さらなる需要減が懸念される。黒ごまの価値を訴求するとともに、白、黒、金ごまそれぞれの特徴を生かす、用途に合わせた使い分け提案が改めて必要だ。
台風の影響で2年連続の不作となった国産については、産地開拓を粛々と進めている。