レモン食品市場が過去最高の85億円規模に、ポッカサッポロが汎用性と健康価値の訴求で牽引

レモン食品市場が拡大し、2024年は前年比104.4%の約85億円と過去最高の売上規模を記録した(出典:インテージSRI+)。背景には健康意識の向上や、レモンの機能性への関心の拡大がある。この成長の中心にいるのが、市場でシェアトップの構成比を持つポッカサッポロフード&ビバレッジだ。
同社の「ポッカレモン」は、もともとカクテルに欠かせないレモンが輸入自由化前に高価だったことから、1957年に“気軽に使えるレモンを”目指して合成レモンの瓶入りレモンを開発したことがはじまり。その後、1972年から果汁100%になり、1988年に保存料無添加になった。60年以上日本の食卓にレモンの文化を根付かせてきた。
家庭で使用されるようになると、レモン食品は、生レモンの代用として唐揚げに添えられるなどの調味料として使われることが多かった。しかし、近年では水やお湯に入れて飲んだり、食酢やワインビネガーの代替としての活用も広がり、食シーンが多様化している。同社では、牛乳とはちみつを混ぜた“レモンラッシー”などの提案も行っている。
「ポッカレモン100」は、高まる健康意識の中、レモンの健康イメージが合致し、需要は着実に増えていった。

これは、2024年秋のリニューアルにより、「ポッカレモン100」は機能性表示食品となり、新たな価値を訴求したことが大きい(※1)。これが生活者に受け入れられ、2024年10~12月の売上は前年比116%と大きく伸長。年間販売金額も前年比108%となり順調な成長を遂げた。
※1 届出表示は、「本品(ポッカレモン100)には、クエン酸が含まれ、高めの血圧(収縮期血圧)を下げる機能があります」。
ポッカサッポロフード&ビバレッジ社マーケティング本部の室晃司担当部長によると、「我々のイメージ調査で、レモンは好きなフルーツランキングでは32位にとどまっている。しかし、同じ調査で“疲労回復”で1位、“気分をリフレッシュ”で1位、“香りが豊か”で2位、“爽やか”で1位となっており、レモンはユニークな立ち位置の果実といえるだろう」と指摘する。こうしたイメージの良さと機能性の高さが市場拡大の背景にあるとみられる。
同社は2025年のレモン食品の販売金額について前年比103%を掲げる。レモン食品に近いカテゴリーである食酢やポン酢が鍋需要の減少などで苦戦しているものの、レモン食品は用途の広がりを背景に好調を維持すると予測しているためだ。幅広いメニューでの使用を訴求してきたことで、季節を問わずに食卓に登場していることが大きい。
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そのレモン食品市場で、同社が今年特に注力するのが有機レモン市場だ。市場全体の約1割を占めるほど伸長する有機レモンカテゴリーに対応し、「ポッカレモン100プレミアム 有機レモン」をリニューアル。これまではストレート果汁だったが、新たにストレート果汁と濃縮果汁をブレンドする製法を採用し、レモン本来の風味を活かしながら飲用・料理用途の幅を広げた。同社の知見を活かしたブレンド技術を採用することで香りを高めたとしている。
〈「キレートレモン」も過去最高出荷を記録、機能価値訴求で飲む理由を明確化〉
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一方、レモン飲料市場においてもポッカサッポロフード&ビバレッジは存在感を示している。主力ブランドの「キレートレモン」は2024年に過去最高の出荷を記録。同社は好調要因を、レモンの機能価値と情緒価値の両方を体現している製品のためとしている。
特に、小瓶健康ドリンクの市場定着が進んでおり、「キレートレモン本体」と、機能性表示食品である「キレートレモンMUKUMI」、「キレートレモン クエン酸2700」の3ライン(各155ml)が市場をけん引した。「MUKUMI」は“美の探求”を、「クエン酸2700」は“リフレッシュと健康”を訴求する商品として、それぞれの価値を提供。用途ごとに異なるニーズを満たしながら、ブランドの拡大を実現した。

さらに、2025年は機能性表示食品として、「キレートレモン クエン酸」から中容量(525ml)・大容量(900ml)を新発売する(※2)。小型瓶製品の「キレートレモン クエン酸2700」は炭酸入りだったが、新製品は炭酸を含まない設計のため、炭酸が苦手な層やフィットネス時の飲用ニーズにも対応し、飲用シーン拡大と幅広いユーザーの獲得をねらう。また、主力の500mlPET「キレートレモンWレモン」もリニューアルし、ビタミンCとクエン酸の成分訴求を強める。一方、食品カテゴリーでは「ポッカレモン100」を軸に、さらなる市場拡大を狙う動きもある。
※2 届出表示は「本品にはクエン酸が含まれます。クエン酸は日常生活や運動後の一時的な疲労感を軽減することが報告されています」
コミュニケーションで「ポッカレモン100」は、販売戦略の一環としてスーパーや量販店での52週テーマと連動したレシピ提案を拡充する。特にサラダ、サバ、ドリンク、焼肉といったレモンと相性の良いメニューに注力し、店頭での訴求力を高める考え。さらに、新たな層へのアプローチとして、若年層や女性をターゲットにしたプロモーションも展開する。これは、SNS上で「レモンを美容や健康の習慣として取り入れている」という声が増えているため。日常的にレモンを使用するユーザーの幅が広がっている。
ポッカサッポロフード&ビバレッジは、単なる製品販売にとどまらず、レモンを通じた健康的なライフスタイルを提案し続けている。健康志向の高まりとともに、レモン食品・飲料市場は今後も成長が見込まれる。