〈シグナル〉強まらない「官邸主導」
第48回衆議院議員選挙が終わった。終わったら、途端に忘れ去られてしまったようだ。自公連立与党の圧勝という何の面白みもない、変化の乏しい結果になど誰も見向きもしないということか。
ところが、いわゆる「農林議員」(この場合は、党であれ政府であれ“農”の字のつく役職の経験者を指す)の当落となると、総体の結果とはやや異なる。ありていに云って、“有力議員”の何人かが落選したのだ。もちろん、ことさら農政課題が争点となっていたわけではないから、落選は農政課題とは無関係の、個別な事情による。そのうちの一人に、西川公也氏(自民、元農相)がいる。
第2次以降の安倍政権下にあって、「官邸主導」の名のもとに、自民党“農林族”は徐々にその身を削がれてきた。農政課題とは無関係ながら、結果として「最後の農林族」と目される人物が落選した事実を、今後の与党農政の先行きにとって「明るい材料」と捉える向きが多い。つまり「官邸主導」がさらに強化され、再び強硬な農政改革が動き出すとの観測だ。
そうだろうか。
確かに今回は与党の圧勝だったものの、無所属の鞍替えを除けば、自公とも改選前議席数を落としている。「3度目の信任を得た」と言い切ることができるかどうか微妙だ。この点、「安倍『政権』は信任を得たかもしれないが、安倍『総理』が信任を得たわけではない」と云い切る方すらいる。故に「官邸主導」が弱まることすらないものの、強まる可能性は皆無、と考える。
〈食品産業新聞 2017年11月2日付より〉