〈シグナル〉TPP11 複雑怪奇なセーフガード制度
TPP11がこの12月30日付でいよいよ発効する。2019年2月1日には日EU・EPAの発効も見込まれており、4月1日からはそれぞれ協定発効2年目を迎える。品目によってはこの数カ月間で2度も関税率が変わるため、現産品申告書の手配など、貿易事務手続きを行う乙仲や商社の苦労がしのばれる。
TPP11と日EU・EPAで重要品目の牛肉と豚肉では、関税率の引下げと併せて新たな関税の緊急措置、いわゆるセーフガード(SG)が設けられ、TPP11参加国およびEU加盟国からの輸入量が発動数量を超えた場合、年度末までSG発動時の税率が適用される。
もともと現行の制度は、牛肉の場合、各四半期の輸入量が前年の117%を超えると発動するという単純な仕組みだった。このため、食肉の輸入業者は毎月の貿易統計からSGの可能性を推測し、必要に応じて各社輸入調整をし、SG発動を回避することもできた。
TPP11と日EU・EPAでは、それぞれのSG対象となる輸入数量が別途月の旬ごと(上旬、中旬、下旬)に公表される。そのため今後は貿易統計の数量と、TPPおよび日EUのそれぞれの輸入数量、そして予め決められた発動基準数量を照らし合わせてSG発動の判断せざるを得なくなる。関税引下げにより、貿易が促進されるのは結構だが、複雑化する制度により、発効早々にSGという事態にならなければよいが。
〈食品産業新聞 2018年12月13日付より〉