〈シグナル〉「想定外」を挑戦の機会に
「想定外も想定して対応しなくてはならない」。清涼飲料業界は、一昨年の夏の猛暑の際に西日本豪雨や人手不足による物流の混乱で、止渇飲料が売り場で品薄になったことを教訓に、昨夏は大消費地に近い場所に配送センターを新たに設けた。冒頭の言葉は、飲料メーカー幹部が語った決意である。
その後も、過去最長の長梅雨や相次ぐ大型台風の到来など、「想定外」が繰り返し起こっており、きわめつけが新型コロナウイルスである。食品メーカー各社は、相次いで2月下旬から人の集まるようなイベントや発表会を中止した。
ただ、発表会を予定していた企業の中には、記者を集めずにライブ配信形式の発表会へ変更したローソンや日本コカ・コーラのような新たな試みもあった。また、ポッカサッポロフード&ビバレッジは、関係者のみで行ったCM発表会を事後リリースとして配信している。
新たな発表会形式に挑戦した結果、メーカーは従来の記者発表会で届かなかった生活者に直接訴求できる方法を手に入れた。ECの売上高が拡大していることを踏まえれば、今後も実施する可能性はあるだろう。
また、在宅勤務やテレワークを行う企業が急速に増えたことは、働き方改革の推進にもつながる。「想定外」に直面したからこそ、従来の延長線上ではない新たな挑戦に取り組めたといえる。
我が家では、休校中の高校生の息子が髪をピンク色に染めて「世界観が変わった」と喜んでいた。それもまた挑戦か。
〈食品産業新聞 2020年3月9日号〉