〈シグナル〉話題化に必要な本質的価値
2023年7月からTBS系で放送された、堺雅人さん主演のテレビドラマ「VIVANT」(ヴィヴァン)は、23年夏ドラマの中で最も多くの人に視聴された作品となった。注目は、初回視聴率こそ11.5%だったが、SNSなどで話題になって、最終回は19.6%まで数字を伸ばしたことだ。
なぜ、「VIVANT」は話題化に成功したのか。要因には、豪華キャストや海外ロケなど、制作費をしっかりかけたことが挙げられている。視聴者の予想を裏切るストーリー展開で考察する人が増え、放送日以外も話題になったことも追い風になったそうだ。ただ、最も重要な基盤は、堺雅人さんの演技力だったのではないか。
堺さんのことは、学生時代に大学構内でよく見かけた。劇団メンバーと体力トレーニングや発声練習を日々繰り返しており、舞台では圧倒的な存在感と演技力を発揮していた。劇団の友人に、堺さんは生活費を切り詰めるため醤油味の白米をおかずに白米を食べていると聞いて驚いたが、そんな苦労を感じさせず、舞台を観た人間は“この人はきっと有名になる”と噂していた。
食品業界を取材していると、商品担当者から斬新なアイデアによりSNSで話題化したいという声をよく聞く。ただ、人々が話題にする基盤には、ドラマにおける役者の演技のように、本質価値が認められる必要がある。食品であれば本当のおいしさの追求か。徐々にでも話題化される商品が増えることを期待したい。