〈新春インタビュー2018〉不二家代表取締役社長・櫻井康文氏 洋菓子事業、外販部門拡大に努力

昨年度も主力の卸売菓子事業が好調に推移し、売上高・利益ともに過去10年で最高の実績となった。視点を変えた価値の再訴求が功を奏した。対して洋菓子事業は苦戦が続いており、CVSや回転寿司チェーンなどへ向けた外販部門の拡大に努めている。中国事業については2016年まで右肩上がりで成長していたが17年は若干後退。急激に拡大するEコマースへの対応と「ポップキャンディ」に次ぐ商品の育成により、今年以降ふたたび成長路線に乗せていく考えだ。

〈卸売菓子が過去10年で最高の実績〉
――昨年を振り返って

国内の卸売菓子事業は好調に推移した。年間売上高、経常利益ともに過去10年で最高の実績となった。チョコレートにおける健康訴求が功を奏し、主力ブランドの生産性も向上した。一方、洋菓子事業は苦戦が続いている。最大の要因は世帯構成の変化にともない、家族人数が減少してきたことだ。誕生日など身近な記念日の機会が減り、日常生活において、家族で洋菓子を食べる機会も減っている。

不二家の洋菓子店は、どちらかというと都会にある総合洋菓子店として歩んできたため、都会においては専門店化の波に押されており、都会型の新たなビジネスモデルを見つけることが難しくなっている。そこで近年では、CVSや回転寿司、カフェチェーンに向けた卸売を強化し、外販部門の拡大に努めている。

また、レストランについてはメニューを刷新し、健康志向への対応を強めた。価格訴求型の他チェーンとは異なる魅力を打ち出すよう心掛け、回復基調にはあるが、お客様の節約・低価格志向は根強く、店舗数の減少もありレストラン事業としては伸び悩んだ。

〈中国事業はEコマース対応へ〉
――中国事業の状況は

早期の売上高100億円到達を目指し、2016年までは右肩上がりであったが、17年は若干後退してしまった。7~8%の減収となったわけだが、利益は売上比十数パーセントを確保した。

これまでは「ポップキャンディ」に集中し、好調に推移していたが、市場に競合品が増えてきた。また、これまで結婚式の引き出物需要を獲得していた「ポップキャンディ」の代わりに、チョコレートを利用する人が増えていることもマイナス要因となった。そのようななかで、新たに「ポップキャンディ」のデポジットタイプを提案したが、予定どおりいかなかった。

Eコマースが急激に拡大し、特にカード決済が主流の若年層の購買行動が大きく変わってきた。主要販路となっていた高級・大型スーパーの力が弱まってきたようにも感じる。このような流通の変化をうけ、Eコマースに強い代理商との取引を検討している。中国事業の立て直しは喫緊の課題だ。糖価上昇もあり、今後は「ポップキャンディ」に次ぐ商品の育成に取り組んでいく。

――国内の卸売菓子について

商品開発の方針として、「健康」「グルメ」を唱え続けてきたが、時代の流れも同じ方向へ動いているように思える。昨年もこの方針のもと、主力3ブランド「ルック」「ミルキー」「カントリーマアム」の強化に努めた。

昨秋は、個食タイプの新商品「ルック4(チョコレートコレクション)」を発売した。センターインチョコレートとして定着している「ルック」ブランド初のソリッドタイプの商品で、カカオ含有率27%、40%、55%、70%の4種アソートとした。1箱で手軽に“食べ比べ”が楽しめるワンコインの商品として提案し、好評をいただいた。当社の売れ筋は、今も昔も袋入りの商品なので、来春には家族需要にも対応した袋入りを発売する予定だ。

国内菓子市場では、高カカオチョコレートをはじめ少量・高品質をうたった個食タイプの商品が売れているが、当社としては引き続き袋入り商品の提案に力を注ぎたい。

長年展開している大袋タイプの「アーモンドチョコレート」「ハートチョコレートピーナッツ」「同アーモンド」において、昨年は新たにピーナッツやアーモンドの栄養成分と“毎日イキイキ!”のキャッチコピーをパッケージ上に掲載し、健康感を訴求した。すると、店頭での回転率が向上した。ナッツの健康価値が広く浸透してきたからだろう。

このように品質的に従来と同じ商品であっても、視点を変えて打ち出せば価値を再訴求することができる。袋入り商品の需要は底堅いので、着実に売り上げを伸ばしていきたい。

当社は、原料の85%を輸入に頼っているため、為替や原料高の影響を大きく受ける。原料価格が軒並み高騰するなか、カカオ原料は比較的安定している。特に今秋からは、安く調達した時のカカオを使って製品化していくので、収益性は上がるとみている。

現状、チョコレートカテゴリーにおける当社の市場シェアは6%程度だが、将来的に10%を目指したい。

――今回のインタビューテーマ“サステナビリティ新時代の食品産業”について

顧客ニーズにどれだけ応えられるかが、企業としての持続的な成長に関わってくる。世の中の環境問題と健康や安心といった食品産業にとっての基本は、根っこの部分でつながっていると考える。例えば、有機には化学薬品を使わない。これは自然を整えることとなり、その先にある人間の健康を守ることにも関係している。その意味で食品企業が、環境に配慮した生産者を支援することや国産原料を使うことは、サステナビリティのひとつであり、菓子メーカー各社がこういったことに目を向けることが、菓子ビジネスを持続させることにつながる。

このような考えから、「16枚カントリーマアム大人のバニラ」などでは国産小麦を使っており、このほど「フード・アクション・ニッポンMIP賞」を受賞した。利益だけを求めるのではなく、良いものを作り、良いものを売るという基本を大事にしていきたい。

〈食品産業新聞 2018年1月1日付より〉