【新年インタビュー】カンロ 村田哲也代表取締役社長

カンロ 村田哲也社長

顧客体験価値を軸にブランド基軸経営推進

中期経営計画2024のもと「ブランド基軸経営と顧客起点」「サステナビリティ推進」「経営基盤強化」を推し進め、2024年12月期第3四半期では売上高、利益ともに過去最高を更新した。リーディングカンパニーとして飴、グミそれぞれの市場活性化を図り、キャンディーの価値向上をめざす。新年を迎え、カンロ社長の村田哲也氏に話を聞いた。

――2024年を振り返って

先が見えない時代を象徴するかのような1年でした。キャンディー市場においては、遥か先だけではなく一歩先の動きも捉えて潜在ニーズを掴み、商品やコミュニケーションを展開することが大切です。

コロナ禍を経て生活者の嗜好や行動は変化しており、例えば、飴は風邪予防の観点からのど飴の需要が拡大し、グミは自宅で食べる人が増え、食シーンが広がりました。このような変化に対応しつつブランドを育てる意識を持ち、キャンディー市場の成長につながる提案を行いました。

――業績が好調だ

前期(2024年12月期)も国内コア事業が引き続き大きく伸長しました。第3四半期の売上高は前年同期比10%増の226億7900万円、営業利益は40・8%増の31億4700万円となり売上高、営業益ともに過去最高を更新しました。通期でも過去最高となる見込みです。

国内コア事業ではブランド基軸経営のもと、主要ブランドに開発や生産のリソースを集中し、営業面でも単品あたりの売り上げ向上に注力しました。特に、主力のピュレグミは23年にグミ市場におけるブランドシェア1位となりました。トップとはいえ、シェア率は10%強です。競合関係は厳しく、2024年もブランドの強化、育成に力を注ぎました。春には3年連続でテレビCMを投下し、店頭販促策との連動により、拡販を図りました。特に昨年は、プレミアムシリーズの売れ行きがよく、「白桃」を中心に、インバウンド需要を取り込むことができました。

〈キャンディーの価値向上めざす〉

――飴の状況は

健康のど飴が好調です。当社は1981年に菓子食品業界で初めてのど飴を発売しており、その歴史を継承するシリーズです。現在は定番の「梅」を軸に、季節ごとに期間限定フレーバーを投入しています。日常的な“いたわり”のど飴として提案し、CMの投下などで活性化を促しました。健康志向を捉えたノンシュガー系も好調ですが、グルメ系やファンシー系はやや苦戦しました。

近年、国内の飴市場は機能性や健康価値を付加した商品が求められる傾向にありますが、飴本来の楽しさや魅力は、グルメ系やファンシー系のアイテムに詰まっています。飴市場の将来を考えると、今後はそうした情緒価値を改めて訴求していく必要があります。

――グミと飴の売上構成比が逆転した

第2四半期の売上構成比は飴47・9%に対しグミ50%、第3四半期は飴46・9%に対しグミ50・8%でした。1912年の創業以来、第3四半期現在で初めてグミが飴の売り上げを上回りました。当社にとっては歴史的な出来事です。近年はグミを成長エンジンに掲げてきましたが、その流れのなかでグミも飴も、どちらも伸びています。これは理想的な状況といえます。

ただ第4四半期は、松本工場(長野)に拡張したグミ棟が2024年10月に稼働を始めました。安定供給を優先してグミの販促を抑えたこと、冬の飴の需要増もあり、通期では飴の売り上げが上回りそうです。

〈グローバル事業を加速〉

――グローバル事業について

現在は中国、香港、台湾を中心に輸出型ビジネスを展開しています。中国では、現地メーカーのAmos社と総販売店契約を結び、中国専用のノンシュガーキャンディー「0糖1刻」等の飴を販売しています。しかし、「0糖1刻」が定着せず、また現地の市況が低調で、当初の見通しからは状況が変わってしまいました。

香港や台湾は堅調です。現地の代理店を通し、主要CVS、スーパーでグミを中心に販売しています。定番のピュレグミやマロッシュは台湾と香港で共通のパッケージとし、効率化を図っています。今年はアメリカでの展開を加速させます。

――ヒトツブカンロ事業は

順調です。2024年4月には、グランスタ東京店に続く常設2号店の原宿店を東急プラザ原宿ハラカド内に出店しました。期間限定のポップアップショップも全国各地で開設しています。「グミッツェル」が、看板商品となっています。

NBとは異なるチャネル、異なる商品を展開し、カンロの世界観に触れていただくことで、引き続きキャンディーの価値向上につなげていきます。

――中期経営計画2024の総括を

昨年は中計の最終年度でした。企業パーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」のもと、パーパスドリブン経営を推し進め、社内に理解が浸透してきたと感じています。しかし、社内調査のスコアをみると目標値には達しておらず、及第点といったところです。引き続き一人ひとりが自身の業務に結びつけ、自己実現や自律的な行動としていく、自分ゴト化が必要です。財務数値目標は、順調にクリアしています。

――サステナビリティに関する取り組みは

中計の主要施策の一つにESG経営を掲げ、2022年にサステナビリティ委員会を立ち上げました。24年には組織を再編成し、よりスピード感をもって動ける体制となり、具体的な取り組みが増えました。

例えば、糖の価値創造へ向け、支店や工場で働く社員が店頭や地域イベントに赴き、糖の価値をお客様へ直接伝える活動が活発になりました。当社がオフィシャルプレミアムパートナーを務めるレノファ山口FCさんとも協働し、カンロの冠試合や食育イベントを行いました。

――2025年の抱負を

今年は「Kanro Vision 2030」の実現に向けたセカンドステップとして、新たな中期経営計画が始まります。CX推進を軸にブランド基軸経営を強化し、もう一段上の成長をめざします。グローバル事業も重要な局面を迎えるので、現地のパートナーと一体となって前進、加速させていきます。

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創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
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