大豆・油脂業界、成果を拡大する一年に
2017年は、日本だけではなく、おそらく世界中が、20日に米大統領に就任する、ドナルド・トランプ氏の言動に注目する一年になると思われる。
09年にノーベル平和賞を受賞し、昨年5月には現職の米大統領としては初めて、広島平和記念公園を訪問するなど、穏健的なイメージの強い、オバマ大統領と比較すると、こわもてのトランプ氏はあらゆる意味で「相違」しており、対立候補だった、ヒラリー・クリントン氏の下馬評が高かったのも、今になって思えば、米国の基本政策の大きな変化を敬遠する意識の表れだったと感じられる。
トランプ氏が昨年中に明らかにした、大統領就任後の「100日計画」の中には、実現性も疑問視されるメニューが含まれている。
とりわけ食品産業界として気がかりなのは、交易に関する政策だろう。広く知られているとおり、TPPからは離脱すると表明しているほか、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉あるいは離脱、さらには米国の労働者を不当に扱う貿易協定の根絶を指示するとしており、保護主義的な色彩の強い方針を示している。
TPPで妥結していた、農産物や食品の関税削減・撤廃が反故になる可能性を歓迎する雰囲気は、今のところ皆無と言ってよいだろう。と言うよりは、先の見通しが全く立たないことへの、漠然とした不安が醸し出す空気が漂っているように感じられる。
関連して、中国に対しては人民元安が米国の輸出を不利にしているとして、為替操作国に指定すると表明しているだけではなく、sNsで厳しく批判を続けていることも、米中関係の先行きが強く懸念される状況にある。
要するに、「何をするか分からない」怖さが、トランプ氏にはある。そして今のタイミングこそ、トランプ氏がこれから披露するであろう米大統領としてのワンマンショーの緞帳(どんちょう)が上がるのを、大きな不安感と、わずかな好奇心を持ちながら、日本を含めた世界が待っている瞬間だ。近年、こうした瞬間は無かったように思われる。2017年は、どう転ぶか予想のつかない一年になる、とも言えるだろう。
大豆・油脂業界にとっての2017年は、原料相場・為替共に比較的安定し、第2四半期決算では大幅増益を確保し、達成感もあった昨年と変わって、原料相場はおう盛な需要を背景に高止まり、為替は一時、1ドル=120円台をうかがうなど、円安方向に大きく振れている。さらに減産によるパーム油高、それにつられた大豆油高などもあって、コスト環境は風雲急を告げている。
そうした情勢変化を踏まえ、昨年末にJ-オイルミルズ、昭和産業が2月から食用油の価格を、キロ30円・斗缶500~550円以上の値上げ改定を行うと発表している。
さらに主要製油メーカーは、17年度から新中期経営計画のスタートに向けた準備を進めており、両方の意味で重要な一年になると思われる。
大豆食品業界では、豆腐業界では昨年、豆腐議連が発足したほか、公正競争規約のとりまとめが本格化するなど、業界活性化に向けた取り組みが進んでいる。納豆は発酵食品の需要拡大なども背景に、消費は順調に伸びており、豆乳も料理用途の広がりもあって、市場拡大が続いている。
その意味では、昨年の大豆食品業界は概ね良年だったと言え、製油業界も合わせて、昨年の成果をさらに拡大する一年としたい。