高オレイン酸大豆の普及に取り組む、たん白分向上が課題-米国大豆品質会議

全米大豆基金財団ディレクター デイヴィッド・ウィリアムズ氏

アメリカ大豆輸出協会(USSEC)主催のアメリカ大豆品質展望会議では、17年産大豆の作柄報告に続き、生産者による米国大豆生産の動向報告や、世界の大豆需給見通しについて報告した。

ミシガン州で大豆やコーンを生産するデイヴィッド・ウィリアムズ氏(全米大豆基金財団ディレクター)が、近年の大豆生産動向について報告した。

ウィリアムズ氏はミシガン州北部で1,215ha の農地を所有し、作付比率は大豆が58%、コーンが32%、小麦は10%だとした。17年産大豆の作柄については、ミシガン州は概ね良好だとした上で、生育条件は必ずしもベストではなかったと振り返った。

ウィリアムズ氏の農地では大豆とコーンの輪作を行い、また不耕起栽培にも取り組み、持続可能な農業を行っているとした。他にも、GPSを活用した農薬散布など総合的な害虫管理を実施しているとした。ほかにもミシガン州独自の土壌プログラムに参加し、必要な栄養素を計算し、適切な肥料、播種時期、種子数につてテクノロジーを駆使して決定しているとした。農機具の燃料節約によるコスト削減、単収向上に寄与しているとした。

NON-GM大豆については、15年にプレミアム価格が高かったため、作付けたが16年、17年は価格が下落したことから、生産しなかったとした。18年は430エーカーで生産予定だとした。

また、米国の大豆業界では、トランス脂肪酸問題を受けた大豆油消費の減退傾向を踏まえ、この7年間で約6,000万ドルを費やし、高オレイン酸大豆の開発・普及に取り組んでいることを紹介した。ただ、たん白含有量向上は課題として認識しているとし、たん白分、油分量を増やしつつも、糖質含有量が少ない大豆を目指していると述べた。

 

ガビロン社 アンクシュ・バンダリ副社長

ガビロン社 アンクシュ・バンダリ副社長

〈米国で大豆作付がコーンを上回る可能性、南米動向も注目-ガビロン社見通し〉

続いて米国穀物大手のガビロン社のアンクシュ・バンダリ副社長が、世界の大豆と穀物需要と供給の見通しについて講演した。

はじめに米国大豆の状況については、作付面積は2年連続で最高記録を更新し、収穫量は4年連続でトレンドを上回っているとした。前年は南米の干ばつにより米国大豆輸出が好調だったが、今年は南米が豊作だったことから、競争を生み出しているとした。一方で投資ファンドは株高・商品安の中で、大豆など穀物の買い気は弱いとした。

世界における穀物作付面積は、大豆は養鶏、養豚需要が増加しており、毎年3%増、コーンも飼料需要により2%増、小麦は人口増加率と比例して1%増だとした。また大豆生産高の伸長割合は、70%が作付増加に起因し、30%は単収向上によるものだとした。

また、米国のコーンと大豆の作付割合は、20年前はコーンが52%、大豆は48%だったが、07年にエタノール法が成立し、コーンが55%、大豆が45%となったとした。最近ではエタノール産業の成熟と中国需要に支えられ、コーンが50%、大豆も50%だとした。さらに18年は大豆作付面積が過去最高になれば、大豆がコーンを初めて上回ることになると指摘した。

南米では穀物作付面積が3%増加しており、中でもコーン生産が増加しているとした上で、貿易量は今後も堅調だとの見方を示した。南米の豊作により、米国コーン輸出シェアは33~38%に縮小するとした。今後は南米で大豆、コーン収穫が始まるまでの相場が注目されるとした。

中国の動向については、大豆輸入量が9,700万t~1億tに到達する見込みだとした。コーンと小麦は在庫が増加しており、コーン在庫は政策により減少に努めており、世界でコーン作付面積減少に導くとした。対照的に小麦在庫は増加を続けているとした。

大豆ミールについては、需要増加は緩やかになっているとした。中国とインドの輸入量がけん引しているものの、飼料配合割合で小麦が増えているため、大豆ミール使用量を抑えているとした。

それでも3%程増加しており、400万tの増産が必要だとした。大豆と大豆ミールを合わせると、約1,000万tの増産が必要だとした。

〈大豆油糧日報2017年11月22日付より〉