「世界のGMOの商業栽培に関する最新状況」テーマにセミナー開催/バイテク情報普及会
冒頭あいさつしたバイエルクロップサイエンスの藤村佳樹執行役員は「今、私どもの業界は大きな変化を迎えている。こうした背景には今後持続的に食糧をどう供給していくかという問題がある。それには新しい技術の導入、開発、革新が必要になってくる。しかし、残念なことに新しい技術に対して、特に食の分野では安全であっても不安を呼ぶような状況になっている。安全であることが十分に理解されていない。こうしたセミナーで技術の利点、どう安全に役にたっているかを伝えることで、GMOに対する理解を推進していきたい」と述べた。
続いて、国際アグリバイオ事業団のロードラ・ロメロ・アルデミタ博士が、「世界のGMOの商業栽培に関する状況」について講演した。
17年のGMOの国別栽培状況は、中南米が10カ国、アジア太平洋が8カ国、北アメリカが2カ国、EUが2カ国で、栽培面積の53%は開発途上国、47%が先進工業国だったとした。GMO栽培を導入する上位5カ国を見ると、開発途上国の3カ国(ブラジル、アルゼンチン、インド)と先進工業国2カ国(米国、カナダ)で全世界のGMO栽培面積の91.3%を占めるという。
GM大豆の栽培割合が90%以上を占める国は、米国、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、南アフリカ、ボリビア、ウルグアイ。GMトウモロコシは米国、ブラジル、アルゼンチン、カナダ、ウルグアイとなっている。GM大豆の栽培面積は17年度で9,410万haとなり、全世界のGMO栽培面積の50%を維持しているとした。
GMOによりもたらされるメリットにも言及し、1996~2016年の期間で、世界的に農業生産者の所得が増加するとし、その額を$1,861億米と試算した。また、同期間で、1億8,300万ha の耕作・栽培への使用を回避できたとし、殺虫剤の使用も18.4%低減、CO2の放出量も271億kg 低減し、それは1年間に1,670万台の車を走らせなかったことに相当することなどを主張した。
GMOにかかわる世界の動きでは、国連食糧農業機関、国際食料政策研究所、G20が、15年以内にバイオテクノロジーを通じて飢餓や栄養不良を根絶することに取り組むとしたほか、イタリアでは農業生産者がGMトウモロコシの栽培を希望、アフリカではGMOの栽培承認を推進中、南オーストラリア州では農業生産者がGMOの促進を求めていることなども紹介した。
最後に、科学的に安全であることが明らかになっているとした上で、リスクのみではなく利点の厳密な検討、環境保護・持続可能性を考慮した農業分野の生産性、数百万もの人が飢餓状態にあり、貧しい状況下にある人についても考慮するべきとする考えを強調した。
〈GMOの科学的実証に基づいた客観的な評価を懇願/日本バイオテクノロジー情報センター・冨田房男代表〉
続いて、日本バイオテクノロジー情報センターの冨田房男代表が「GMOをめぐる我が国の動向」について講演した。冨田氏は、北海道でGMO栽培を公的機関で実施してもらうための活動を紹介。北海道立総合研究機構や北海道知事などに公的機関でのGMO栽培実施を呼び掛けたが、「消費者はGMOに対して不安をもっている。大多数の生産者は雑草防除の問題解決の糸口として、GMOを受け入れることは考えにくい」とされ、全く相手にされない実情を吐露した。
日本バイオテクノロジー情報センター・冨田房男代表
冨田氏は貿易自由化が北海道農業に与える影響にも言及し、農産物価格の低下、コスト低減競争、農家戸数の減少、農村地域の崩壊を挙げた。その上で、(GMO)が健康に有害な作用を及ぼすかどうか科学的実証に基づいて客観的に評価してほしいことを改めて訴えた。
〈大豆油糧日報 2018年8月27日付より〉