秋田・角館で4店舗を運営 安藤醸造・安藤大輔社長に聞く みそ・しょうゆなど多品種少量生産で高付加価値

安藤醸造本店 明治時代中期に建てられ、“レンガ造蔵座敷”で知られる
〈高付加価値商品を直売〉
安藤醸造は1853年に創業、165年の歴史がある。仙北市角館町下新町の本店に建つ東北最古の煉瓦蔵は仙北市文化財に指定されており、歴史ロマンを堪能できるお店だ。

同社のこだわりは、「無添加・天然醸造」であること。機械任せにせず、熟練した製造責任者が、品質を管理し、一人の製造責任者が、みそ・しょうゆ・漬け物それぞれを責任持って管理する。一桶一桶異なる発酵状態にある商品を、自らの目や鼻、舌を使って管理しているのだという。一人の責任者が見ることが出来る量には限界があるため、結果、たくさん作ることが難しく、多品種少量生産で高付加価値商品を直売で販売しているのだという。

安藤大輔社長によれば、同社は町内に趣の違う4店舗をかまえ、同社のみそ・しょうゆ以外にも、しょうゆのアイス、甘酒ジェラートなどが楽しめ、また、同社の味を堪能できるレストランでは土鍋ラーメン・土鍋ごはん・お餅料理を提供している。みそ豚まん・鶏しょうゆまん・角館ちまき豚・角館ちまき鶏などは同社名物として認知度も高い。

「桜が開花するゴールデンウィークには、100万人の観光客が訪れる。年間にすると観光客は250万人にもなる」とし、こだわりの直売を可能としている大きな要因のひとつがここにある。とはいえ、秋田県の人口は減少傾向、少子高齢化の勢いもあり、卸売での販売も考えないわけにはいかない。

安藤醸造・安藤大輔社長

安藤醸造・安藤大輔社長

〈ちまき・きりたんぽ鍋・比内地鶏の親子丼の素などバラエティ豊かにそろえる〉
同社では、加工食品の開発・販売にも力を入れており、ちまきやきりたんぽ鍋、みそのきりたんぽ鍋、比内地鶏の親子丼の素など、バラエティ豊かな食品を販売していることも魅力のひとつとなっている。

みそなどの原料として、また主食用として、米そのものを生産しているのも同社ならでは。農業法人を設立して、専用農地を確保し、安全でおいしい米作りを行っている。土壌作りから精米まで、全ての工程にこだわったあきたこまちを生産しており、「お米がおいしくないと、みそもしょうゆもおいしくならない」と安藤社長の顔もどこか誇らしげだ。

同社の商品は、付加価値の高い商品をセレクトして販売する、明治屋でも販売しており、「原料などにこだわり手間をかけて作っている分、コストが高くなってしまうので、薄利多売は難しい。明治屋さんは当社のコンセプトを理解していただけるのでお任せできる」とし、今後は卸売での販売にも意欲を見せる。

また、自社通販ではピーク時、全体の売上の半分を稼ぎ出したこともあるという。ただ、最近は「アマゾンや楽天などのプラットフォームにも対応していかなければいけないと思っている。しかし、これまでは卸価格を提示してこなかったので、価格面で難しい課題も出てくるだろう」とし、全国への販売には慎重な姿勢を見せている。

秋田県は高齢化が進み、食べる量も減ってきた。一人や二人のためだけに、和食を作って食べる人は少ない。そのため、「家庭での和食の頻度を上げていきたい。メニュー提案をすることで、みそやしょうゆの需要拡大につなげたい」。安藤社長の表情も険しくなった。

同社では、需要の活性化を目的に、地場の稲庭うどんメーカーとコラボし、同社のつゆをセットにした商品を販売し、それが良く売れているのだという。今後は、ほかの食品とのコラボにも積極的に取り組み、業績向上の足掛かりをつけたいと意欲を見せている。

〈大豆油糧日報 2018年10月15日付より〉