全油販連第65回定時総会、宇田川会長を再選、館野東京油問屋市場理事長を副会長に選出
総会後の懇親会で、宇田川会長があいさつし、「全油販連は1953年(昭和28年)に設立され、今年で65周年を迎えるが、今回会長に再選され、改めて身の引き締まる思いがしている。現在は油脂未来セミナーと銘打って、東京・名古屋・大阪で研修会を開いており、メーカー様にもご協力をお願いしたい。また、食品産業界は利益率が低いと言われているが、やはり食品は必需品であり、とりわけ食用油は価値に見合った価格で取引されるべきだと思っている。その意味で、油のことを勉強することにより、高い志と意識を持ってまい進していきたいと思っている」と述べた。
続いて、八馬史尚・日本植物油協会会長(J-オイルミルズ社長)が来ひんあいさつを述べる中で、今年は異常気象・地震など自然災害が相次いでいることに言及した上で、「想定外の事態への備えが必要だと感じており、改めて危機管理やBCP(事業継続計画)を意識していく必要がある。また、こうした異常気象は地球温暖化が原因の一つと言われており、その背景にはCO2排出増加にあるとされている。昨今ではプラスチックの海洋汚染の問題も指摘されており、業界活動や事業活動の中で対処していくことが重要だ」と述べ、油脂業界として、環境保全問題への対処の重要性を強調した。
さらには「米中貿易戦争と言われる国際情勢が、原料・ミール相場に与える影響を注視していく必要があるほか、流通業界ではドラッグストアの台頭、電子商取引の拡大、企業再編など大変早いスピードで変化しており、外食業界では人材確保の難しさ、物流費の上昇といったさまざまな課題がある。油脂コストは昨年より良好な状態にあるが、こうした課題や来年の消費増税を踏まえると、楽観できる環境にはなく、厳しい情勢の中で、いかに付加価値を創造していくか、製販配の枠組みを超えて知恵を出し合って、共に発展する道を作りたい」と述べた。
乾杯のあいさつは木村副会長が行い、「身近な食に関わっている私どもとしては、人がきちんと幸せに暮らしていける社会の実現のため、事業・仕事ができればと思っている」と述べ、杯を挙げた。
〈宇田川会長が油・油問屋の歴史を解説、油売りとして油の価値を理解して努力を〉
総会後の講演会では、宇田川会長が「油売りの来し方行く末」と題して、6月の油脂未来セミナー(既報)で好評だった、油と油問屋の歴史について改めて解説した。宇田川会長は日本で初めての油生産が、摂津国遠里小野村(大阪市)で211年、ハシバミを原料に行われたことに始まり、中世・江戸期を経て、明治・大正、昭和から戦後に至る油と油問屋の歴史や、遠里小野村、新川霊岸島(東京都中央区)、御油(愛知県豊川市)といった油と縁のある土地の由来などを解説した。
まとめとして宇田川会長は「油は灯明油から食用油への変遷はあるが、昔から人間の生活に無くてはならないものだ。一方で相場商品としての性格上、価格の変動に対応してきた。1961年(昭和36年)に東京油問屋市場でまとめた『油問屋経営白書』によれば、当時の油問屋は自社配送を行っていた事もあり人件費・諸物価の高騰に対して、利益改善運動に取り組んでいた。やはり油売りとして、油の価値を理解して努力することが大事だ」と述べた。
〈大豆油糧日報 2018年10月25日付より〉