昭和産業、2019年の課題は中期経営計画の数値目標達成と「次の3年で何を目指すか」の明確化/新妻一彦社長
自然災害の多い一年だった。国民生活にも大きな影響が及んだが、改めて食品業界として、商品の安定供給の重要性を痛感した。当社としてもBCP対策では、地震への備えをこれまで重視してきたが、今後は水害対策や物流も含めて、さまざまな視点で取り組みを強化していきたい。
また、昨年12月にTPP11が発効し、今年2月には日・EUのEPAが発効、4月にはTPP11が2期目に入るが、食品業界だけではなく日本全体が、本格的な国際競争に入る節目が昨年だったと言える。
――油脂食品事業の取り組みとしては。
アルゼンチンでの干ばつにより、大豆ミールバリューが上昇したことで、大豆の搾油採算が改善したことが利益面で寄与した。
家庭用油では、オリーブ油やアマニ油、えごま油といった汎用油以外の油種が伸びると共に、食用油生の食用途が広がる中で、健康志向油の商品開発が進むなど市場が活性化しており、植物油業界にとっては明るい材料と言える。
他方で汎用油は、スーパー・コンビニ・ドラッグストアなど業種業態を超えた価格競争が激化し、売価面で課題を残している。さらに人手不足などに伴う人件費の上昇や物流費の上昇といったコスト増加の影響も厳しいと認識している。
その中で油脂類の上期の販売は、前期並みの物量を確保しながら、コスト環境に見合った価格での販売を行うと共に、取引先との関係強化や、エリア戦略など採算を意識した販売を行ってきた。
また、従来から取り組んできた提案型営業をさらに進化させ、お客様自身が気づいていない問題点・課題点の掘り起しにまで踏み込み、改善案を提案する課題解決型営業を推進した。それにより、「炊飯油R」などの機能性油の販売も順調に拡大している。
このほか、大豆たん白の生産量・販売量は年々伸びており、輸出の可能性も視野に入れながら、今後も強化を図っていきたい。畜肉用途にとどまらず、大豆たん白は健康素材として非常に注目され、さまざまな形で利用される中で、用途開発も進んでいる。ただ、生産能力は限界に達しつつあり、能力増強も検討したい。
〈鹿島工場で設備投資、製油工場の生産効率向上、BCP対策も意識〉
――長期ビジョンに基づく中期計画(17~19年度)の進捗状況は。
「中期経営計画17-19」ではしっかり足場を固めて、次の3年につなげることを考えている。18年度はその2年目として、油脂・製粉・糖質といった基盤事業の強化が大きな戦略だ。
その一環として、主力工場である鹿島工場では総額約60億円を投じて、さまざまな設備投資を行っている。製油工場では大豆、菜種の抽出を行う工程について、約35億円をかけて、昨年2月から更新工事を行っており、BCP対策も意識した形で生産効率の向上を図るものだ。
荷役設備についても約10億円を投資して更新する。据え付け完了は20年5月を予定しており、22%の電力削減効果を見込んでいる。さらに鹿島工場だけではなく、船橋工場、神戸工場も更新工事を考えている。人手不足に対応した省人化への要求はますます高くなっており、工場ロボットなどの開発も検討していきたい。
――海外事業の展開は。
長期ビジョンで掲げる「事業領域の拡大」の一環として、海外売上比率を高める取り組みを進めている。その中でベトナムにおいては、13年からプレミックス事業を行っているインターミックス社に資本参加しているが、ホーチミンの工場に続いて、メコンデルタ地域のハウジャン省においても20年春の操業開始を目指して、プレミックス工場の建設を予定している。また、食品企業向けのテクニカルサポートを行う昭和産業ベトナム社を昨年設立し、将来を担う人材育成に努めている。
インターミックス社では現在、現地向け家庭用商品の生産が中心だが、今後は食の多様化に対応した現地向けラインアップの充実や、業務用商品の拡大にも着手していきたい。
〈人材の確保・育成が最大ポイントに、働き甲斐のある職場作りに努める〉
――新年の抱負はいかがですか。
「中期経営計画17-19」の数値目標(連結売上高2,600億円、連結経常利益115億円)の達成と、次の3年で何を目指すかを明確にすることが、今年の大きな課題になる。
油脂食品事業では、原料相場や為替相場などの変動に応じて、適正な価格で販売していく基本方針に変わりは無い。並行して、機能性油など高付加価値品の商品開発と販売拡大に力を入れていく。昨夏には揚げ物のサクミを向上させるフライ油「揚げてサクッとオイル」を発売したが、お客様を通じて、最終の消費者にも価値を提供できる提案を行っていきたい。
また、企業は最終的に人であると考えており、人材確保と育成が最大のポイントになると思っている。「ダイバーシティ経営宣言」や「昭和産業健康宣言」などを通じて、働き甲斐のある職場作りに努めているが、人事制度の改革も次の大きな課題になるだろう。多様な価値観を有する幅広い人材が活躍し、新たなイノベーション創出と、生産性向上がこれまで以上に発揮できる制度を検討していきたいと考えている。
〈大豆油糧日報 2019年1月11日付より〉