J-オイルミルズ、油価改定や中期的成長を見据えた高付加価値品拡販など推進
同社の19年度通期業績予想は増収増益(売上高1.7%増の1,900億円、経常利益9.1%増の69億円)を計画。主な取り組みとして、物流など事業インフラコストや油脂コストの上昇にあわせた食用油の価格改定(6月3日出荷分から)、前年度営業減益となった油脂加工品事業、食品・ファイン事業の収益力向上に加え、中期的成長を見据えた高付加価値品、海外展開への積極投資、構造改革の継続的な推進などを挙げた。
その中で価格改定について、八馬社長は「外部環境の変化への対応として、価格改定を3月発表し、現在まさに交渉させていただいている。物流コストは、取引先も同様の状況であり、ご理解をしっかり得ながら、実現していくことが今年度の大きなポイントとなる。高付加価値品の販売量を拡大する一方で、汎用品は物量を追わず、価格最優先でのオペレーションを志向する」と述べた。
〈外部環境の変化を受けにくい、持続的に成長できる事業構造を構築/八馬社長〉
19年度の具体的な施策ポイントとして、油脂事業では引き続きオリーブ油、長持ち油「長調得徳」、調味油「J-OILPRO」を中心とする高付加価値品の売上拡大を挙げた。
八馬社長は「中期経営計画では高付加価値品の構成比は、売上で3割弱(18年度実績23.5%、19年度目標25.5%)、粗利益で4割弱(同33.2%、同39.0%)まで持っていく目標を立て、取り組んできた。売上高は若干ハードルが高いものの、粗利益はほぼ目標値に達する見通しだ。全体の4割程度が、相場変動の影響を比較的受けにくい高付加価値品で構成されれば、事業体質の強化につながるものと期待している」と述べた。
売上拡大の施策としては、オリーブ油はCM、SNSなどによる用途拡大とさらなる定着化、「長調得徳」「J-OILPRO」は、機能性の丁寧な説明を通じて販売店を通じた提案活動を強化するとしている。
また、中食・外食、加工ユーザーを対象としたソリューション事業では、ハンバーグやから揚げといった肉メニューを対象とした、油脂・スターチの複合提案で成果が出ており、さらに消費増税・軽減税率をにらんだ中食需要の拡大も想定し、風味・香り・食感における経時劣化の抑制を解決する提案の場が広がっていくとの見方を示した。
海外展開では、タイでの油脂・スターチのソリューション提案で成果が上がっていると強調した上で、アセアン地域での拡大を図る考えを示した。
構造改革の取り組みでは、包装・充てん子会社の統合による効率化向上、ケミカル新工場の竣工など老朽化対応、健康食品事業、インド事業からの撤退や商品数(SKU)の6%削減などを挙げた。
このほか油脂加工品事業では、墺バッカルドリン社のミックス粉など製菓・製パン領域の強化や、家庭用チルド市場での新規領域の検討、粉末油脂の新規需要拡大などを挙げた。
食品・ファイン事業では、加工スターチを生かしたソリューション提案力の強化、SOYシートの米国市場での拡販などを挙げた。
最後に、後半戦を迎える中期経営計画については、「着実に業績向上を図ることは大切だが、少子高齢化、グローバル競争の激化などを勘案すると、2030年に向けた成長の取り組みと基盤構築を重点的に行うことで、外部環境の変化を受けにくい、持続的な成長を果たし得る事業構造を構築していきたい」との考えを示した。
〈大豆油糧日報 2019年5月24日付〉