金ごま・黒ごま製品、各メーカーが値上げの動き 原料生産国で価格高騰、物流費や人件費の上昇も
マイナークロップ(栽培面積が小さい作物)のごまの中でも、金ごまと黒ごまは産地が限られており、今後も相場高が続く見通し。現時点では値上げを実施していないメーカーも値上げは待ったなしの状況だ。
日本が輸入する金ごまはトルコ産とエジプト産に限定、黒ごまは南米産があるものの量はわずかで、ミャンマー産にほぼ依存している。ごまは世界の生産量が440万tとマイナークロップだが、その中でも金ごまと黒ごまは産地が限定され、高値で推移している。とくに金ごまはトルコ産が高値のまま新穀の秋を迎えてさらに上昇、エジプト産も急騰している。
加工ごま大手の真誠は11月28日、原料高騰を受けて、業務用の金ごま、黒ごま製品と、黒ごまを使用するごま塩製品を3月2日出荷分より価格改定すると発表した。同社は2月に実施した業務用白ごま製品の値上げの際に、黒ごまと金ごまについては価格を据え置き、原料価格の上昇や人件費・資材・配送費などのコストアップを自社で吸収してきた。黒ごまと金ごまの原料相場が想定以上に高騰し、さらに産地が限定されることから、今後も高値継続が見込まれるとし、値上げに踏み切る。同様の事業環境から、値上げを検討しているところが散見される。
市場動向では、ごま油は引き続き堅調に推移している。健康オイルとして、また調味油として支持されている。各社ともプロモーションを積極展開しており、中でも竹本油脂は今秋家庭用主力製品を一新した「マルホン胡麻油」ブランドの一大プロモーションを展開中だ。
加工ごまは、天候不順や消費増税等による低調な消費環境の中、家庭用は伸び悩んでいる。各社では、家庭用、業務用ともに「加工度=付加価値」の高いねりごまを強化する傾向が続いている。ねりごま生産設備の更新、増強も見られる。
その他、業界で注目を集めているのは、全国胡麻加工組合(藤波一博理事長)の臨時総会(11月5日開催)で紹介された原料原産地表示の「製造地表示」に関する補足資料だ。中間加工原材料として選別(加工)した後に充填・包装を行う場合、「いりごま(国内製造)」のように製造地表示することが可能であるとの見解を、かどや製油が消費者庁に確認したもの。商品の安定供給を図る上で、原料の産地が変動しやすいごま業界にとって、「表示ミスのリスクを回避できる」(メーカー)と安堵の声も。これを組合の推奨とするかも含め、同組合では引き続き議論する。
〈食品産業新聞 2019年12月5日号〉