〈トップインタビュー〉今野醸造・今野昭夫社長 自社栽培原料100%使用のこだわりこそがブランド

今野醸造・今野社長
自社栽培した米と大豆を100%使い、仕込んだ仙台味噌「あなたのために」には、みやぎの名工・今野昭夫さんのこだわりと愛情がふんだんに注ぎ込まれている。

今野さんは、宮城県北部にある全国でも有数の米どころ、大崎平野で1903年に創業した、今野醸造の社長である。丁寧なみそ造りが評価され、仙台味噌品評会では、「最高賞」を受賞している。

「できるだけ大事な作業工程には手作業を取り入れて、日頃の管理も体で覚えるようにしている。作業は機械化した方が楽だが、最終的には目に見えない工程管理が製品づくりに影響してくる」と今野社長自身が経験から学んだ造り方にこだわりをみせる。

「温度計で測れば同じ40℃でも、製造中の温度が熱く感じる時や緩く感じられる時もある。それには意味がある。手作業が多いので、そうした手作業の積み重ねがあるからこそ、うちならではの商品ができあがる」と自信を垣間見せる。

一定の味を維持するのは難しい。そうしなければ、消費者には満足してもらえない。タンク1本1本異なるため、均一化には十分に配慮して作業にかかる。

〈業務用として開発した商品は40種類ほどにものぼる〉
仕込み直前、収穫した大豆と米は丁寧に磨き上げられるという。大豆の皮はぜいたくに削り、ふっくらと蒸し上げる。米は衛生的な糀室で熟練の蔵人が昔ながらの手もみで糀を仕上げる。

仙台味噌「あなたのために」は醗酵後すぐ蔵出しせず、低温室でじっくりと長期間熟成後、一番うま味が楽しめる最適なタイミングで蔵出ししているという。

今野醸造「あなたのために」

今野醸造「あなたのために」

同社では、みその加工食品にもこだわりをみせる。仙台味噌シーズニング「ミソルト」はまさに「振りかけるみそ」。香り高く仕込んだ仙台味噌「釜神」をサラサラのパウダーにして、サラダやパスタ、カルパッチョなどにかけて楽しめる新しいみそを提案している。
 
「お客様のご要望にできるだけお応えしたいという思いから、PB商品としての受注が増えている。飲食店やホテルから、みそ風のたれや、オリジナルのみその開発にも取り組んでいる」とし、業務用として開発した商品は40種類ほどにもなるという。
 
同社への開発依頼が多いのは、「原料から造っているみそ」がブランドとして、世間で認められているからだ。今野醸造のみそを使うことで、競合店との差別化が図れる。同社のみそは決して安くはない。それでも、求められる同社のみそ。社員全員のモチベーションも自ずと高くなる。
 
「価格競争はできない。うちはうちなりのやり方でやるしかない。手抜きをしないでいいものをつくる。従業員にはもっと休ませてあげたいが、休まない。品質管理や新商品開発など、自主的に目標を立ててやっていただいているのでありがたい」とし、こだわりは今野社長に負けてはいない。
 
今後に向けては、「うちの醸造のみそが欲しいと言われるようなものづくりをしていかなければいけない。お客様に愛着をもってもらえるような商品を。喜んでいただけるお客さんが多く、そういうお客さんに支えられている。お客さに応える期待を裏切らないことをこれからも心掛けていきたい」とし、同社のみそでしか得られない満足感を提供し続けていく。
 
〈大豆油糧日報2020年4月22日付〉