注目集める昆虫食、“未来のたん白源”挑戦へ 加工度を高めた菓子・調味料・酒類の開発も
ただ、まだまだ昆虫食に対する抵抗感、忌避感は強いのが現状だ。それでも、食べやすく、挑戦しやすいように加工度を高めた菓子やおつまみをはじめ、原形をとどめず独特のうま味と香りを生かしたビールなどの酒類、しょうゆや塩などの基礎調味料の開発も目立ち、素材・原料としてのポテンシャルは高い。
近い将来、当たり前のように食卓に並んでいる可能性は十分にありえそうだ。
昆虫を使用した最近の主な開発商品
2030年には世界人口は90億人を超えるとみられ、食糧問題は避けて通れない人類共通の課題といえる。すでに13年時点で、国際連合食糧農業機関(FAO)は、その解決手段として昆虫食を推奨する報告書を発表している。
たとえば、コオロギはその重量の約7割はたん白で、低糖質な上、9種の必須アミノ酸、鉄分、カルシウム、オメガ3など栄養満点のスーパーフードとも称される。また、牛や豚、鶏など家畜と比べ、生育時のCO2排出量は少なく、飼料や水の必要量もはるかに少なくて済む。さらには、雑食のため食品残渣を与えることで、食糧廃棄を減らせることにもつながる。
昆虫食でさまざま取り組みを行っているのがJoin Earth(東京都中央区)の昆虫食を探求するチーム「ANTCICADA(アントシカダ)」だ。15年に「ラーメン凪」と「コオロギラーメン」を共同開発して以来、国内外で人気を博した。
4月下旬には通販用の「おうちでコオロギラーメン」を販売開始した。新型コロナウイルスの影響で開業を見送っていた「コオロギラーメン」と「地球を味わうコース料理」の2営業形態のレストランを中央区日本橋にオープンしている。
また、アントシカダは、愛知県の桝塚味噌の協力で「コオロギ醤油」の開発を実現した。うま味とコオロギ由来の香りを持ち、クセは少なく、さまざまな料理に使うことができるという。
調味料では、アールオーエヌ(埼玉県戸田市)は2019年10月、運営する昆虫食通販サイト「バグズファーム」で、「コオロギ塩」の販売を開始した。フレンチシェフが同社のコオロギパウダーを試食すると、「塩との相性が抜群」と助言したことが開発のきっかけだという。コクハク(東京都渋谷区)も昨年11月、昆虫食ドレッシングブランド「TWO THIRDS」をアントシカダと共同開発している。
大学も昆虫食の研究を進めている。中でも徳島大学は昆虫食研究で最先端を走っており、良品計画とも協業している。トヨタグループのジェイテクト(名古屋市中村区)も同大学発のベンチャー企業グリラスと食用コオロギの生産で業務提携した。IoT技術などで自動飼育の実用化を推進し、大量・安全供給の実現を目指す。
高崎経済大学発のベンチャーFUTURENAUT(群馬県高崎市)は、同社のコオロギパウダーを使ったレシピコンテストを開催する。応募期間は7月31日まで。同社は「まだこの新しい食品に対する忌避感は強く、市場普及は限定的」と捉えており、今回の企画は昆虫食に対する抵抗感を減らし、社会理解の形成を目指して市場拡大をうながすことを目的とする。大手製パン・製粉メーカーも協賛していることにも注目だ。
〈大豆油糧日報2020年6月26日付〉