豆腐・納豆の需要拡大、コロナ禍で小分けや日持ち商品など内食需要増える
豆腐市場は近年、微減傾向で推移してきたが、2020年は新型コロナウイルス感染症による内食需要の高まりで需要が拡大している。
総務省の家計調査(2人以上の世帯)の豆腐の購入数量の推移は、2月~8月まで一貫して前年を上回る。特に、政府による緊急事態宣言が発令された4月、そして5月は2ケタ増と急増した。
6月半ば頃からは、落ち着きを見せ始め、さらに長梅雨の影響があったが、大都市圏を中心に需要は高止まりしているもようだ。
外出自粛で家族が集まることが多かったコロナ禍の当初は、料理に使いやすい木綿豆腐を筆頭に、絹豆腐、厚揚げ、油揚げといった素材型が総じて好調だった。加えて、個食化の波の中で近年振るわなかった1丁タイプを求める人も多かった。トレンドの小分けタイプは引き続き好調だ。
また、ストック需要に対応できる日持ちする商品にも引き合いがあった。そのほか、安全安心のイメージがあり、「食でちょっと贅沢したい」というニーズから、国産大豆使用商品が好調との声も聞かれる。特に需要が拡大している木綿豆腐については、主要メーカーで設備投資を行い、需要増に対応していく構えだ。
コスト面では、九州産大豆を中心とした国産大豆の高値が懸念されている。国産大豆使用比率の高いメーカーにおいては、一部製品で輸入大豆への切り替え、価格改定に踏み切る動きが見られた。
他方で、「そこまで国産比率が高くないため、数年の相場の傾向を見ていく必要がある」との意見も聞かれる。
〈健康イメージで需要が爆発的に拡大/納豆市場〉
納豆の今期の動きは、1月の国立がん研究センターによる「納豆食は死亡リスクを低減する」との研究成果発表、2月のテレビ放映に続くコロナ禍で、健康イメージの強い納豆は、需要が爆発的に拡大した。
家計調査の納豆支出金額は今年1~8月累計で12.5%増となった。特に需要が増加した2~6月は、売り場の品薄状態が散見された。各社出荷が間に合わない事態となり、主力品に絞っての生産で対応した。
需要が落ち着き始めた6月半ば~直近については、帰省や旅行が控えられ、例年よりもスーパーの来店客数が増加、納豆も前年を上回る推移だ。しかし、メーカー各社は慎重な見方を示す。「実績が悪かった2019年同期は上回っているが、2018年対比では振るわない状況」とし、今後に向けて施策が重要と口をそろえる。加えて、コロナ禍では安価な商品が販売の中心だったため、業界では単価下落を懸念する声も聞かる。これに対しても施策が求められる。
今後、不景気感から生活防衛意識が高まると予想される中、比較的手頃な価格で良質なたん白質が摂れる大豆加工品が担う役割は大きいだろう。
〈大豆油糧日報2020年10月21日付〉