伊藤忠食品、プラントベース食品の提案を強化、今後も注力とバイヤーの声
2020年1月に名古屋で開催した、伊藤忠食品東海営業本部主催の展示会では、大豆、小麦、きのこの3種類のベジミートの食べ比べを行い、来場したバイヤーからもおいしいと好評だったという。小売業への提案も進めており、同社が棚割りを手掛けた食品スーパー(SM)の売場も増えている。
営業企画本部営業企画部MD企画課主任の長田恵里奈氏は、「ベジミートは調理方法が難しく、おいしくないというイメージから、SMの売場に並べても手が出しにくく市場が広がっていかない。当社では、おいしく、即食性のあるベジミートを中心に商品を集め、販促POPやメニュー提案を棚割りとセットで行うことにより、トライアルのきっかけづくりをしている」と述べる。
伊藤忠食品 営業企画本部営業企画部MD企画課主任・長田恵里奈氏
名古屋の展示会ではプラントベース食品を約200品披露した。そのうち大豆由来のベジミートの取り扱いは40~50品にのぼる。「ベジミートもさまざまな種類があり、食感や味わいもそれぞれ異なる。家庭での料理の用途によって使い分けることができ、選択肢がかなり増えている」と説明する。
採用店舗について、「今年に入ってから関西での展開が増えている。関東では2019年からすでにPB食品専用コーナーの開設に取り組んでいる」と語る。
市場環境については、新型コロナの影響により、4月中旬あたりから精肉の商品が品薄になったため、ベジミートに挑戦してみようという人が増えたという。また、家庭での調理機会が増えたことで、新しいジャンルの料理に挑戦する消費者も多かったとしている。「新しいカテゴリの商品は手に取ってもらうことが難しいが、販促パネルなどの提案効果もあり売上が伸びた。バイヤーから、今後も注力したいという声もいただいている」としている。
〈おいしくないと続かない、日常使いできる簡便性のあるベジミートを提案〉
長田氏は、過去にトレンドとなったココナッツ油やアサイーなど、生活に定着しにくい事例が多かった背景として、海外の食品が日本の食文化に合わなかったことを要因に挙げる。一方で、「大豆ミートなどのベジミートは日本の食文化にも合う」と指摘し、大手NB(ナショナルブランド)が商品開発に注力していることから、「一時的なブームではなく、広がっていくと思う」と期待する。
ただ、定着するために必要なのは、やはり味の部分だとする。「過去にスーパーフードなども扱ってきたが、おいしくないと続かないというのが消費者の意見だ。海外では健康や環境に良いという理由で流行しているが、日本では、まずは毎日食べたくなるようなおいしい食品として認められることが先決」と強調する。
特に乾物のベジミートについては、「畜肉と違って味が浸透せず、肉本来のうま味成分や油脂分が少ないため食べた時にもの足りなさを感じるという声も聞こえてくるが、まだまだおいしくなる余地があるということ」と期待する。
今後の提案については、「大豆ミートに限らず、オーガニックやナチュラル食品も以前のブームから再び需要が上がっている。以前は主に感度の高い消費者が商品を手に取ることが多く、幅広い層に定着させることが難しかった。しかしコロナウイルス感染拡大によって、自らの健康を見直す機運が高まりつつある。いまは日常的に消費される商品が回転していくことが求められている」。
その上で、「日常使いできるような簡便性のあるベジミート、できれば国産で価格が抑えられたものを継続して提案している。各SMも新しい取り組みを続けようとしており、声をかけてもらうところは多い。当社としては、得意先に向けて、来年開催予定の五輪も見据えた提案を強化していきたい」と意気込みを述べる。
〈大豆油糧日報2020年12月21日付〉