JA仙台 震災から10年、被災農家の生産意欲を喚起「仙大豆」プロジェクトの歩み

JA仙台「ソイチップス」
〈大豆を復興のシンボルとしてブランド化、「ソイチップス」など展開〉
2021年3月11日に東日本大震災からちょうど10年を迎える。壊滅的な被害を受けた宮城県では、農業の分野においても、大豆生産者をはじめ多くの農家が被害に遭った。JA仙台では、復旧農地で最初に生産した農作物が大豆であったことから、大豆を復興のシンボルに位置づけ、大豆を原料とした加工食品ブランド「仙大豆」のプロジェクトを開始。宮城県産大豆の知名度を上げることで、被災した農家の生産意欲を喚起し地域農業の復興・産地化につなげる取り組みを行ってきた。

〈2020年6月〉JA仙台、震災復興のシンボル「仙大豆」シリーズのお中元ギフト販売開始

宮城県は全国上位の作付面積を誇る大豆生産地であり、仙台東部地域は仙台平野として宮城県で代表的な農業地帯だ。しかし、その東部地域の約78%が大津波で被災し、農業機械や農業施設が流失・損壊したという(仙台市公表)。家屋などのがれきの撤去と農地の除塩作業などの復旧事業が行われ、震災翌年には、内陸側の被災農地から段階的に営農再開が進められたが、当初は排水機場が損壊し稲作に必要な通水が出来なかったため、地力増進効果も期待できる大豆の生産が行われた。これを受け、JA仙台では、「農家の想いに応えたい、大豆の魅力を伝えたいという意識が、『仙大豆』プロジェクトのきっかけになった。また、宮城が全国上位の作付面積を誇る大豆の産地であることが消費者にあまり知られておらず、知名度を上げていきたいと考えた」という。

開発に当たっては、キリンビールの「復興応援キリン絆プロジェクト」の支援が大きな後押しとなったほか、商談会による販路開拓などでも協力を得たという。

〈宮城県産大豆の更なる認知拡大に向け、新たな大豆商品の開発に意欲〉
「仙大豆」は、洋菓子店「パティスリーポタジエ」(東京)監修のもと、国産大豆の中でもワンランク上と賞される宮城県産大豆を使用して開発。2014年3月には第1号商品「ソイチョコ」を駅、空港、首都圏において、ブランドの浸透を目的に販売開始した。その後立て続けに「ソイコロ」「ソイパスタ」を展開し、メディアで取り上げられたこともあり、「仙大豆」の浸透が進んだという。更なるブランド化のため、「ソイチップス」を首都圏コンビニにて販売し、知名度が向上した。「ソイチップス」の好評を受けて、デイリー商品のヨーグルトの開発に着手、大手量販店で「ソイヨーグルト」を販売した(「ソイヨーグルト」は現在、賞味期限などの問題で製造を休止している)。

「仙大豆」は国内に留まらず、期間限定ではあったが海外マーケット(オーストラリアやシンガポール、香港)に輸出した実績もある。一押し商品のスナック菓子「ソイチップス」は、主原料に宮城県産ミヤギシロメを使用したスナック菓子で、ノンフライ加工のためヘルシーな商品に仕上がっている。また、大豆の特徴を生かし、通常のじゃがいもを使ったチップスと比較し、低糖質でたんぱく質、食物繊維が豊富だ。農産物直売所・ネットショップ・雑貨店・空港売店・高級スーパーで販売している。

直近の「仙大豆」の販売状況に関してJA仙台は、「お土産としての需要が強い商品のため、コロナの影響により駅や空港の発注が激減し、販売は苦しい状況」だという。その上で今後の展開について、「コロナ禍において観光需要が減少する中、オンラインショップによる個人需要は高まっている。こうした変化に柔軟に対応した商品開発を行い、多くの消費者に宮城県産大豆の魅力と生産者の想いを伝えていきたい。宮城県産大豆は県内では認知度が少しずつ上がってきているように感じるが、首都圏ではまだ低いままだ。認知向上に向けて、『仙台の大豆、だから仙大豆。』という分かりやすいネーミングのもとで、これまでにない新たな大豆商品を開発する『大豆フードイノベーション』を展開していきたい」と意気込む。

〈大豆油糧日報2021年2月22日付〉