大豆由来食品「プラントベース」で起こるカンブリア爆発、代替肉の開発はセカンドステージに突入
食品業界は他業界と比べ安定していることもあり、変化は緩やかだ。ただ、大豆由来のPBカテゴリに限っては現在、IT業界の変化のスピードに例えられるドッグイヤーの様相を呈しているといっても過言ではない。けん引するのは、ネクストミーツやDAIZといったフードテックベンチャーで、フットワークが軽く、矢継ぎ早に商品開発を進めるとともに、流通の売り場における陣取り合戦にも攻めの姿勢を貫く。
ネクストミーツは、全国の「イトーヨーカドー」に採用された「NEXT焼肉シリーズ」が創業1年で国内外10万食以上の販売に達した。2021年3月に代替鶏肉「NEXTチキン1.0」を発売開始したかと思えば、代替豚肉「NEXTポーク」の商品化を発表し、10月から発売を予定する。さらに動物性原料不使用の代替卵「NEXTエッグ1.0」の商品化にも成功している。10月には植物性の「NEXTツナ」を発売することも発表した。
DAIZは、丸大豆からつくる代替肉「ミラクルミート」が好評だが、同ブランドで植物性ツナをメニュー化し、業務用での展開を開始した。すでに牛肉、豚肉、鶏肉、牛乳、卵などに近い栄養素性を作り出すことにも成功している。
従来の大豆ミートの多くは、肉と一口に言っても、牛肉、豚肉、鶏肉のいずれかというよりは、広義の肉を代替していた。実際、ハンバーグやハム・ソーセージなど、合い挽き肉が使われることの多い畜肉加工品の形で販売されるケースが目立ち、ミンチやブロックタイプなど、形状の違いでメニューを使い分けていた。
最近の大豆ミートは細分化が進み、牛肉、鶏肉、豚肉タイプなどの畜種を再現し、焼くなどの調理を施せるものの開発、焼肉の香りやうま味を表現することに成功している。代替牛タン「あぁ牛タン」(クラシエフーズ)のように特定部位や、代替肉唐揚げ「罪なきからあげ」(湖池屋)や代替豚カツ「罪なきとんかつ」(湖池屋)、「これが大豆!?手羽先味」(カバヤ食品)など、調理肉の食感を再現した菓子も登場している。
湖池屋「罪なきからあげ」
カバヤ食品「これが大豆!?手羽先味」
〈大手メーカーが存在感を発揮し、主食からスイーツまで一気に多様化〉
多様化については、フードテックベンチャー各社も代替魚や代替卵の開発に乗り出す動きはあるが、長い歴史と高い研究力を有する大手メーカーが存在感を発揮している。乳や卵アレルギーを持つ人も、安心して手を出せる信頼できるブランド力も強みだ。
マルサンアイは「豆乳グルト」や大豆麺「ソイドル」などをそろえ、ポッカサッポロフード&ビバレッジも植物性ヨーグルトを展開している。不二製油グループ本社のバター様製品「ソイレブール」やマルコメの「大豆粉シリーズ」といった代替商品はこれまでも存在していた。
ただ、この1~2年でさらに多様化が進んでおり、さとの雪食品は2019年から、新ブランド「感豆富」(かんどうふ)第一弾となる「大豆のプリン」を投入した。マルサンアイは昨秋、豆乳加工品として「豆乳シュレッド」を、今春には「豆乳スライス」を新発売した。
マルサンアイ「豆乳シュレッド」
2021年に入って、フジッコは新ブランド「Beanus(ビーナス)」から大豆が主原料の「ダイズライス」を開発し、キユーピーは植物性卵「HOBOTAMA(ほぼたま)」を業務用で投入、ハーゲンダッツジャパンは「ハーゲンダッツ」ブランド初の豆乳アイスを北海道限定で発売した。アサヒコは9月から「トーフプロテイン」シリーズの新商品「豆腐のおやつ」として、ヴィーガン対応の「プリン」と「杏仁豆腐」を発売予定だ。
フジッコ「ダイズライス」プレーン盛り付け
キユーピー「HOBOTAMA」解凍、開封後イメージ
アサヒコ「豆腐のおやつ プリン」
生命の歴史を振り返ると、およそ5億年前のカンブリア期に起こった爆発的な進化により、現在の動物の祖先がほぼ出そろったとされる。やや大袈裟ではあるが、今年は大豆系PB市場におけるカンブリア爆発ともいえるだろう。
〈大豆油糧日報2021年9月2日付〉