「米国大豆サステナビリティ認証プロトコル」東京五輪調達コード採用転機に/アメリカ大豆輸出協会
2013年に、アメリカ大豆輸出協会(USSEC)はこのサステナブルな生産を、「米国大豆サステナビリティ認証プロトコル(SSAP)」として制定し、2018年には「2020年東京オリンピック組織委員会」から当大会の持続可能な調達コードに適合するとして承認され、SSAPが日本で受け入れられる大きなきっかけとなった。立石雅子日本副代表に、米国大豆のサステナビリティの歴史と今後の展開について話を聞いた。
アメリカ大豆輸出協会(USSEC)立石雅子日本副代表
豆腐や納豆、豆乳をはじめ、大豆油、みそ、しょうゆなどの調味料、最近では大豆ミートまで幅広い食品に米国産の大豆が使われている。そして、米国大豆のほとんどが80年以上の歴史があるサステナブルな農法で育てられている。
2013年に、アメリカ大豆輸出協会(USSEC)はこのサステナブルな生産を、「米国大豆サステナビリティ認証プロトコル(SSAP)」として制定し、2018年には「2020年東京オリンピック組織委員会」から当大会の持続可能な調達コードに適合するとして承認され、SSAPが日本で受け入れられる大きなきっかけとなった。立石雅子日本副代表に、米国大豆のサステナビリティの歴史と今後の展開について話を聞いた。
米国の生産者は、サステナブルな農法で一番重要なのは土壌であり、耕さない不耕起栽培だと答える。しかし、約80年前の米国では、何も考えずに農業が行われていた。1930年代に農業的な要因から中西部でダストボウルと呼ばれる大規模な砂嵐が起きたことが契機となり、土壌保全法をはじめ、農家に科学的根拠に基づくさまざまな解決策を提供することになった。後に全米に農務省の自然資源保全局が設けられ、法律に則って農業を行っているかを確認するための監査官が配置された。
SSAPは、これら集団的な取り組みを前提にサステナブルな大豆生産の仕組みをわかりやすく示した認証制度で、「生物多様性と生態系の維持」、「サステナブルな生産活動」、「労働環境改善」、「生産活動と環境保全の継続的改善」という、4つのルールのフレームをつくった。全米95%の農家が農業保全プログラムに参加し、今では環境への取組が日々の慣行になっている。
2013年にSSAPを制定した当時、日本ではサステナビリティは全く浸透していなかったが、16年にSDGs推進本部が首相官邸内に設置された際、証券会社など金融機関がいち早く注目した。社会的なことを考え、健全な経営を行っている企業を評価する必要があり、そのニーズに合致したためだ。企業に投資をする際、サステナビリティの観点が重要であるということが急速に広まった。
〈認証マークは使用無料でコスト負担を大きく軽減、原料原産地を証明できるメリットも〉
世界の大豆生産量3億6,000万tのうち、米国の生産量は1億1,000万tと約3分の1以上を占めコストメリットがある。森林を伐採せず、サステナブルな農法や保全プログラムにより、安心・安全で経済的な大豆の安定供給が可能だ。
また近年、気候変動による影響で世界の各地で災害が発生し、それによる農産物の被害が報道されているが、米国では約30州で大豆を生産している。さらに、IP(分別生産流通管理)大豆においても米国は世界最大の生産量を誇り、カナダのNon-GMOの7倍近い量がある。最大の輸出先である日本の輸入商社やメーカー、米国のサプライヤーは先を見越した契約栽培を実行し、緊密に連携してきた。そのため、今後、気候変動リスクやプレミアム上昇は予想されるが、その振り幅は他国より断然少なく、安定的に供給できることが米国の強みだ。
大豆のサステナビリティは付加価値であり、メインの購買要因はおいしさ、健康、手ごろさだと考えている。一方で、サステナビリティへの取り組みは日本のみそや納豆、豆腐などの加工メーカーが企業のブランド評価を高めるツールになりうる。昨今のサステナビリティの意識の高まりはチャンスである。これまでサステナブルな調達を考えていなかった企業は、まず何から取り組めばいいか分からない。啓発活動として、サステナビリティがテーマのシンポジウム開催も予定している。
これからも日本の大豆加工品メーカーに対し、安定供給を行い、それを支えるのが、サステナブルな農法だということを分かりやすく、伝えていきたい。SSAPの認証マークの使用は無料だ。サステナブルな調達方針を自社で策定するのはコスト負担が大きいが、SSAPを利用すれば、大きく軽減できる。また、米国の食品大豆はIPハンドリングされており、SSAPの認証マークを付けるだけでトレーサビリティの確保や原料原産地を証明できるのもメリットだ。
〈大豆油糧日報2021年9月6日付〉