コオロギ食のプレイヤー数が急増、「食べるハードル下がっている」と浸透へ期待も
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コオロギは成長が速く、育てやすい上に、牛などの畜肉と比べると、1kgの生産に必要な飼料や水がはるかに少なく、CO2排出の削減にもつながる。まだまだ昆虫を食べることに対する忌避感は根強い印象だが、「コオロギを食べるハードルは下がっている」という浸透への期待の声も聞かれる。
一足先に話題となったのは、大学発のベンチャーだ。コオロギを含む昆虫食は2013年頃からすでに話題となっており、高崎経済大学発のFUTURENAUT(フューチャーノート、群馬県高崎市)は、「後半の先発組になる」(櫻井蓮代表取締役CEO)。タイから輸入したコオロギパウダーを用いて、菓子や麺、パンを自社ブランドで販売しているほか、敷島製パンと業務提携して立ち上げた「コオロギ カフェ」シリーズの「コオロギのフィナンシェ」などに使用されている。同社は2019年7月にターゲットマーケティング戦略を提案する事業でスタートしており、櫻井CEOはコオロギ食を浸透に向けて、「イノベーターやアーリーアダプターは何もしなくても売れる。マジョリティに売れるための戦略を研究している。市場のボトルネックを拡げられれば」と意気込みを述べる。
2019年5月に創業した徳島大学のベンチャー、グリラス(徳島県鳴門市)は、国内でコオロギを生産・加工し、食品メーカー向けにコオロギ粉末を販売している。無印良品の「コオロギせんべい」にも採用されている。同社は、新たに自社ブランド「C.TRIA(シートリア)」を立ち上げ、6月4日からクッキーとクランチを、9月29日からカレー、冷凍パンを発売している。今後もさまざまな商品を開発していく考えだ。商品名は「循環型に養殖されたコオロギ」の英語表記の3つのCにちなんだもので、お洒落なパッケージはコオロギを想起するデザインにはなっていない。「コオロギの使用は表立っては言わない。フードロスを解決したい。コオロギの雑食性を活用し、食品残渣を餌の一部にして育てたコオロギを育て、食品に使用する。サーキュラードフードとして広めていきたい」と、環境面でのアプローチからコオロギ食の普及を目指していく考えだ。
グリラス「C.TRIA(シートリア)」
〈異業種も熱視線、練り菓子やパン、そば、ペットフードなど幅広い用途〉
食品がメイン事業ではない企業もコオロギ食に熱い視線を送る。化学品の専門商社で食品素材や健康食品も取り扱うミヤコ化学(東京都千代田区)は、インドネシア産のコオロギの粉末を輸入し、日本で二次加工している。「昨年の展示会で発表し、今回の出展を機に本格発売を開始する。成約も見えており、練り菓子やパン、麺で話が進んでいる」と説明する。「この1年、2年ではなく、じっくりと取り組む。これから市場ができてくるジャンルになる」と期待を寄せる。
ミヤコ化学「インドネシア産コオロギパウダー」
大五通商(静岡市葵区)は、包装機械や包装資材の販売がメイン事業で、ベトナムに工場がある。食品原材料の事業も手掛け、静岡にはウナギの加工工場も持つ食品メーカーでもある。コオロギ事業はスタートしたばかりで、ベトナムで養殖された乾燥コオロギを輸入し、国内で粉砕している。用途としては、「クッキーは色的にまぎれ、そばにも適しているのではと話している。ペットフードも面白い」と構想する。
大五通商の商品群
マイツ・コーポレーション(栃木県宇都宮市)は、ペーパーカッターのメーカーだ。「取引先は学校関係が多いが、児童数が減り、タブレットが普及し始めた。話題性のある商品として、コオロギに注目した」と参入理由を振り返る。2020年、コオロギを養殖する工場を新しく作り、2021年から稼働をスタートした。「国産でコオロギを養殖しているところは少ない」と強調する。
マイツ・コーポレーション「アレナステ」
〈大豆油糧日報2021年10月25日付〉