関東農政局「管内大豆セミナー」オンライン開催、実需が求める品質など紹介
開催にあたり、関東農政局生産部・原孝文部長があいさつし、「食品大豆に占める国産の割合は2割程度と低いが、ニーズは高い。伝統食品の豆腐、煮豆、納豆はもとより、近年は大豆ミートの需要が高まっており、今後国産大豆を利用した大豆ミートの開発に、消費者・実需の期待が高まっているのではないか」と述べた。
続いて、大豆を巡る情勢について、農水省農産局穀物課・千葉貴行大豆係長が説明した。それによれば、ここ数年、国産大豆の数量は低迷し作付面積も若干減少傾向にあったが、3年産については、北海道や東北、関東といった東日本で比較的天候に恵まれ、概ね平年並の数量が確保できる見込みとした。作付面積は前年から約4000ha増え14万6000haと、順調に増えてきているとした。また広域関東圏では、茨城、栃木、長野の作付面積が多く、単収は栃木と長野が高い状況にある。
さらに、今後の食品大豆の需要量は増加見込みとし、実需者アンケートをもとにした26年度の国産大豆需要量は2020年度比で26%増加の見込みだとした。増産を期待する産地は、北海道が最も望まれており、「生産量が安定しているためだが、その一方で輸送コストがかかり、実需は地元産を使いたいとの希望がある」と話した。とりわけ豆腐、納豆、みその国産需要の増加が見込まれているほか、世界の人工肉市場規模は2017~23年の6年で2倍に成長するとの予測が出されているなど、国内スーパーでも大豆ミート製品が広がりつつあるとし、「海外産原料を使うケースが多いが、国産原料の大豆ミートを製造している企業もある」とし、国産大豆の新たな可能性を話した。
〈みすずコーポ、こうや豆腐製造で長野県産「すずみのり」試験結果良好と評価〉
実需者サイドからは、みすずコーポレーション購買部・町田幸隆部長が「国産大豆に求められる品質」について講演した。こうや豆腐や味付け油揚げを製造販売する同社では、年間約1万7000tの大豆を使用し、そのうち国産使用量は約600tだとした。
みすずコーポレーションは長野県産大豆も使用し、その理由については「長野県内のスーパーから地元の大豆で製造したこうや豆腐商品の供給が指定されている」と話した。長野県産大豆は「ナカセンナリ」が主流だが、たん白含有量が低めであり、工場では使いづらい大豆だと課題を述べた。一方で、2014年7月に仕入先から提案があった新品種「すずほまれ」を試験的に運用開始したところ、ナカセンナリよりも工場適性が良好だったとし、調達数量は限定的だが、現在まで年間10~20tを継続して仕入れているという(ナカセンナリは年間40~50t)。
さらに、2019年12月にすずほまれの後継品種として、東山231号「すずみのり」の提案があり試験を実施したところ、すずほまれと遜色なく結果は良好で、製造上、特段問題は無かったと評価した。要因について、ナカセンナリは糖分が多く枝豆などにするとおいしく人気品種だが、たん白含有量は39~41%、それに対し、すずほまれは44~44.9%、すずみのり43.2%~44.8%と、たん白含有量が高いためだとした。その上で、「高たん白のすずみのりを出来るだけ調達していきたい」(町田部長)とした。他県産大豆の評価に関しては、「以前は九州や東海フクユタカを主に使用していたが、2014年にとりわけ九州産が不作となり、他の品種を試験していくこととなった。現在、国産大豆は北陸の『里のほほえみ』を主に使っている。たん白含有量は44%と高く工場適性は良好」とした。
最後に、大豆に求める条件として、粒径の均一なこと(大粒)を挙げた。「以前、同一品種で大・中粒の成分分析を行ったところ、大粒の方が、たん白含有量が高かった」と説明。そのほか、不良粒がないこと、定温保管が望ましいと話した。加えて、「こうや豆腐製造においては、等級は2~3等が望ましいが、特定加工用でも製造に問題はない。そして、価格の安定化も重要で、天候が収量に影響するが価格高騰は不安のひとつ」と、収量・価格の安定化を求めた。
〈大豆油糧日報2022年3月3日付〉