【海上物流の現状を聞く】西海岸向けコンテナは60~70隻海上に滞船/日新
海上運賃の高騰やコンテナ不足は引き続き、大豆業界にも影響をもたらしている。今年は8年ぶりに、米国西岸港湾の労働組合である国際港湾倉庫労働組合(ILWU)の労働協約の契約更改が控えるが、使用者側からの1年延期の提案も拒否されたもようで、毎回ヒートアップするという交渉は難航が予想される。
無事に契約を終えても、夏から秋にかけては、ピークとなるクリスマス商戦に向けた西海岸へのコンテナ船が急増する。一方、コロナ感染が続く中国の上海では3月28日に都市封鎖(ロックダウン)されたが、長引けば日中間のトレードにも影響が出てくる。グローバル物流企業の日新(横浜市中区)の複合輸送営業部に、最新の海上物流状況を聞いた。
東南アジアや日本から米国西海岸へのコンテナ船は、昨秋辺りまで週1便だった。ところが米国西岸港の混雑で、2週間に1便となり、1~2月には月1便しかないこともあり、欠便も出始めた。2~3月頃に臨時便が出たことで、月2~3便に戻ったという。
中国の旧正月(2022年は2月1日)の時期には、これまでも欠便があったというが、「1週あるかどうかのレベルだった」としている。秋口には日本から米国への船便は、荷物を下ろせない船が100隻ほどあったという。例年のピークシーズンも20~30隻は入港できないとするが、それと比較してもかなりのコンテナ本数が海上に浮いていたことになる。「先週(3月第4週)時点でも60~70隻が滞船していた」。米国から日本への船便も同様に抑制されているといい、大豆の輸入に影響をおよぼしている。
米国西海岸港の積み荷を降ろす作業効率は、釜山やシンガポール、ドバイなどの24時間体制で回転率を上げている港と比べると悪く、「港のパフォーマンスが上がらないと本船の入港率、出港率は上がらない」と解説する。また、船自体も大型化している。昨年春に日本からの直行便がなくなった東海岸行きの船は、パナマ運河を通るため1万TEU(1TEU=20フィートコンテナ1個分)だが、西海岸行きの船は1万5,000~2万TEUだといい、米国西岸湾では、3~4日かけて荷役が行われている。
米国の大手小売店数社は、昨年のピーク時に手を打ち、自社でのチャーター便を開始したが、それでもモノによっては欠品しているという。巣ごもり需要で商品がなくなるためで、「小売の在庫率は一向に上がらない」と説明する。コロナの感染拡大が落ち着くにつれ、モノ消費からコト消費に移っていくと落ち着くと見られるが、米国では時給が上昇傾向にあり、消費意欲は引き続き旺盛である。
〈労使協定の契約交渉ヒートアップ予想、上海ロックダウン長期化はトレードに影響〉
今年は米国西岸港で労使協定の契約更新となり、6月末に契約が切れる。交渉は春先から始まるが、「昨年11月時点で使用者が雇用者に対して1年延期を提案したが拒否した」という。在庫率が上がらない状況の小売業者で組織する協会が、バイデン大統領に交渉の協力を要請する書簡を送ったという話も聞かれるようだ。
7月以降も交渉が長引くとストライキの可能性もあり、無事に契約が更新されても、7~8月からはクリスマス商戦がスタートする。
大豆をはじめとした食品にとって、コンテナの老朽化は、品質に影響する。コンテナ不足の現状では、グレードの高いコンテナを確保するのは難しい。船会社は中国でコンテナ製造を進めているというが、新品のコンテナは、におい移りの問題もあり、食品の場合すぐに使えない。
また、3月28日には中国・上海でロックダウンが実施された。ロックダウン中は上海発のコンテナの割り当てが減り、荷役のパフォーマンスも落ちる。陽性となったワーカーが減ると輸出品の生産量も減り、貨物が必要量を満たせない可能性もある。日中間でトレードする船会社はロックダウンが長引かないと考え、海上で待機しているというが、長引くと天津など別の港に積み荷を降ろさざるを得なくなる。今後の動きがどうなるか、注視が必要だとする。
2010年に、反日感情の高まりから進められたチャイナプラスワンの教訓を挙げ、「中国の1本足打法だと大変」と、今後のリスク管理の必要性についても触れる。
〈大豆油糧日報2022年4月6日付〉