凍り豆腐(こうや豆腐)市場動向、コストアップ続き値上げを推進、プラントベースフードへのアプローチを強化
長野県凍豆腐工業協同組合がまとめた2021年の原料大豆使用量は1万6,366tとなり、前年比6.7%減少した。2020年春に特需があった反動で家庭用が苦戦したものの、業務用は回復傾向にあった。2022年は5月までの累計で4.2%減となったが、月別でみると、5月は2.3%増と前年を上回った。
一方、主原料の大豆価格をはじめとするコストアップが続く中、メーカーの収益環境は悪化している。最大手の旭松食品は2021年9月出荷分から製品価格を引き上げた。
みすずコーポレーションは、2022年3月出荷分より価格改定を実施、「納入価格の改定はもとより、特売頻度についても流通側と協議が必要と考える」としている。登喜和冷凍食品は家庭用、業務用ともに7月をメドに値上げを実施している。
各社が値上げに踏み切ったタイミングに違いはあるが、為替の円安の加速などコスト環境は悪化しており、今後さらなる値上げの動きが出てきそうだ。
業界を挙げての取り組みでは、プラントベースフード(PBF)、植物性たん白質への注目の高まりを追い風とするべく、「こうや豆腐=PBF」としてのアプローチを強化する。
また、こうや豆腐に豊富に含まれる栄養素や、レジスタントプロテインの血中コレステロール調節、血糖値スパイク防止といった健康機能性などの価値を地道に訴求する。
〈お湯を注ぐ即食タイプの画期的な商品登場、主流の含め煮を若年層に訴求〉
主要メーカーの動向では、旭松食品は10月7日に、こうや豆腐のたん白質を手軽に摂れる「TOPURO(トプロ)」3品(ベジタブルブロス、ボニートブロス、チキンブロス)を発売する。
旭松食品「TOPURO」(ベジタブルブロス、ボニートブロス、チキンブロス)
お湯を注いで1分、液体調味料を加えるだけで完成する即食タイプの画期的な商品だ。使用しているこうや豆腐は、新製法(特許出願中)により、熱湯を注ぐだけでふっくらおいしく仕上がる。
健康・美意識が高い人やたん白質を摂りたい人に向けて、主食やおかず、間食としてさまざまなシーンを提案する。新機軸の商品として、新たな売り場獲得を狙う。メニュー提案では、主流の食べ方である「含め煮」(煮物)を若年層に訴求するため、白だし、マギーブイヨンを活用した簡便企画を今年も継続する。SNSを活用したプロモーションにも注力しており、6月には「冷やしておいしい!高野豆腐の洋風アレンジレシピ」を提案した。そのほか、PBF売り場への提案や、「大豆ミート系の新製品を開発していきたい」(旭松食品)。
みすずコーポレーションは、「大豆ミート、プラントミートといった近年の急上昇なトレンドがある中で、こうや豆腐も古くからの精進料理のみならず、植物性たん白質の食材として、問い合わせなどがある。
昨年より、製品パッケージへのQRコード活用による料理レシピの他、SNS活動でインスタなども徐々にスタートされてきた。そのような活動をまた継続していく」(同社)としている。
登喜和冷凍食品は、前期好調だった「すみっコぐらしこうや豆腐」「信州産大豆高野豆腐」に力を入れる。
〈大豆油糧日報2022年7月13日付〉