岡山大学「麹を活かしたものづくり」テーマにシンポジウム開催、フジワラテクノアート寄付講座「微生物インダストリー講座」開設記念
岡山大学はフジワラテクノアートの寄付講座「微生物インダストリー講座」を4月に開設した。
「麹を活かしたものづくり固体培養が生み出す発酵のイノベーション」と題する開設記念シンポジウムを、11月1日に岡山市の会場とオンラインによるハイブリッドで開催する。9月29日、岡山大学で開催された定例記者会見で発表した。当日は、原料処理量約5kgと小型ながら、産業化を想定した試験的培養を再現性高く行える「小型通気式固体培養装置」を屋外に展示した。
岡山大学では、微生物の力を産業利用する可能性を科学的に追及するため、岡山県工業技術センターや種麹メーカー、フジワラテクノアートなどと産学官の研究コンソーシアムを構築し、さらに地域の企業と共同で固体培養を中心とした微生物の力を活用した未利用資源の新規利用の探索を行っている。
固体培養とは、みそ・しょうゆ・日本酒などの発酵醸造産業で用いられてきた伝統的な麹菌の培養方法で、通常の液体培養では得られない物質や酵素が生産される。
固体培養装置として、伝統的に用いられてきた「シャーレ培養(麹蓋培養)」に加えて、岡山県工業技術センターが開発した「温湿度制御型無通風箱培養装置」、岡山大学とフジワラテクノアートで共同開発した「小型通気式固体培養装置」という培養環境制御条件の異なる3種の培養を駆使。研究コンソーシアムで培ってきた固体培養の技術・ノウハウを活かして、新たな機能性素材の開発を行うとしている。
〈醸造以外の産業分野に技術を応用利用、食糧・飼料・エネルギーなどの分野に展開〉
藤原加奈副社長は、「当社は来年創業90周年を迎える、日本酒、みそ、しょうゆ、焼酎などの醸造食品を製造する機械・プラントメーカーで、日本全国約1,500社と取引し、海外27国に輸出している。たくさんの案件を通して、麹づくりの自動化の技術を培ってきた」と紹介した。
その上で、「当社の技術は、微生物の力を最大・産業化する技術である。機械の技術だけでなく、微生物を培養する技術、とくに固体培養技術を活用しながら、19年からスタートした未来を見据えた『開発ビジョン2050』を推進し、世界で微生物インダストリーを共創する企業になろうという大きな目標を掲げている。今後も主力は醸造ではあるが、醸造以外の産業分野に技術を応用利用していこうと考えている。具体的には、食糧、飼料、エネルギー、バイオ素材など、さまざまな産業分野に展開していき、心豊かな循環型社会へ貢献したい。そうした中、産学連携の強化を図りながら、研究を進化させたいと、寄付講座を開設した。小型通気式固体培養装置を活用しながら、研究開発で終わらせるのではなく、社会実装をイメージして取り組みたい。シンポジウムでは、固体培養の可能性を考えたい」と強調した。
岡山大学学術研究院環境生命科学学域の神崎浩教授は、「固体培養と麹菌がキーワードだ。日本酒、みそ、しょうゆはすべて麹づくりから始まっている。固体培養の技術により、地域の植物資源を有効活用していきたい。岡山でのノウハウを全国展開できれば」と強調した。
なお、これまでの成果として、「オリーブ葉成分の微生物による高機能化研究」による新規の抗酸化成分の創生、「日本ワインぶどう果皮成分の麹菌固体培養による食品・化粧品機能性素材への高機能化」などを紹介した。
記者会見にはそのほか、フジワラテクノアートから出向している同大学学術研究院環境生命科学学域の深野夏暉助教、フジワラテクノアートの狩山昌弘専務が出席した。
〈大豆油糧日報2022年10月3日付〉