NEDO・不二製油など「油脂酵母」でパーム油の代替油脂、生産量“世界トップ級”で脱炭素社会実現に貢献めざす
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と不二製油グループ本社、新潟薬科大学による「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」プロジェクトはこのほど、産業用「スマートセル」の発酵培養により得られた油脂酵母からパーム油の代替油脂をつくり、6日間で培養液1L当たり98gという世界トップレベルの生産量を実現した。環境負荷の低い油脂を安定供給するシステムを実現することで、持続可能な脱炭素社会の実現へ貢献することを目指す。
10月4日にオンラインで、NEDO材料・ナノテクノロジー部の林智佳子室長は、プロジェクトの背景などを説明した。植物や微生物などの生物を用いて物質を生産する技術は、省エネルギーであるだけでなく、原料を化石資源に依存しないバイオマスから生産できるため、炭素循環型社会の実現や持続的経済成長への貢献を期待できる。そのためには菌株の選抜・育種や培養条件の最適化などのほか、大量生産のためのスケールアップが必要で、「プロジェクトでは、この各開発段階の課題を解決しながら、一気通貫で実生産の実現を目指している」と強調した。
油脂酵母生産のメリットとしては、広大な土地や水が不要となること、熱帯雨林の保全にもつながること、二酸化炭素の排出削減も期待できることを挙げた。得られる油脂は、機能性油脂・食品・化粧品・化成品などさまざまな用途利用が可能だという。
今回の成果としては、より高付加価値な油脂組成のオレイン酸を高効率で発酵生産可能なスマートセル株を用いて、油脂酵母からパーム油の代替油脂の培養を5L発酵槽で実施。その結果、6日間で培養液1L当たり98gの油脂の生産に成功した。対糖油脂収率では20%と良好な成果が得られるなど、これらの成果は油脂生産量としては世界トップレベルの水準だという。
林室長は「パーム油代替油脂の実用化に向けて、2026年度の最終目標(4日間で培養液1L当たり100g、対糖油脂収率25%)に大きく近づいた」と意義を強調した。今後も継続して研究開発・改良を進め、2050年頃には、世界最高水準の油脂生産性を持つ産業用スマートセルによるカーボンリサイクル型の国内油脂供給システムの実現を目指している。
不二製油グループ本社の荒木秀雄主席研究員は、「システムが出来上がると、パーム油と同等の価格になると考えている。(最終目標が実現すれば)2030年でパーム油代替として年間数万t以上の生産ができる可能性も見えてくる」と話した。
なお、今回の研究成果は、10月12日から14日までパシフィコ横浜で開催されるバイオテクノロジー展「BioJapan2022」のNEDOブースで展示される。
〈大豆油糧日報2022年10月6日付〉