植物性刺身「まるで魚」シリーズ販売好調、マグロ・イカ・サーモン、「代替ツナ」「いくら」展開も/あづまフーズ
あづまフーズ(三重県三重郡菰野町)が2021年7月に自社通販サイトで発売したプラントベース(植物由来)の刺身「まるで魚」シリーズのマグロ、イカ、サーモンの3品は、“本物と遜色ない見た目”だとして注目を集めている。
「大満足ではない」(あづまフーズ)としながらも、計画に対して販売は好調だという。2022年7月には同シリーズ第2弾として、「プラントうなぎ蒲焼」と「プラントいかわさび」を夏場に限定発売し、いずれも好評で2週間ほどで完売となった。現在はツナやいくら、ネギトロなども開発を進めている。
シリーズ第1弾の3品は、業務用で一般的な230gの柵で販売している。スーパーでは刺身は3~4切れのパックで売場に並ぶのが一般的だが、30切れ分の量となるため、同社では「冷凍で一般の消費者が購入するには大き過ぎたのが反省点で、設計が中途半端だった。もう少し改善、改良していかないといけない」と総括する。
一方で、「品質的には本物そっくりの見た目と評価された」と手応えを得ている。
味の部分については、「風味付けしていないので味がしないのは当然だが、もっと本物っぽくしてほしいという声もある」という。「フレーバーを入れるのも一つの考え方だが、当社はプラントベースを求める消費者に合わせて、動物性エキスを使わない商品設計で開発している」とこだわりを語る。ただ、現在は水産代替品のツナを開発中で、「エキスを加えないとツナ缶の風味にはならない。プラントベースで開発するポリシーに反するが、外食などの企業とコラボ企画でフレーバーを加えた代替ツナを近々世の中に出す準備はしている」としている。
〈「プラントうなぎ蒲焼」は大豆ミートと豆腐から、第3弾は高騰するいくらの代替品〉
第2弾として発売した「プラントうなぎ蒲焼」を発売した理由として、うなぎが絶滅危惧種となっていることと、「世界的な人口増加と食のニーズを考えると、海外の方がプラントベースは可能性があると考えている」と説明する。
身の部分は、乾燥大豆ミートと豆腐を練って成形しており、皮の部分は昆布由来のアルギン酸からつくって、張り合わせている。タレは県内のしょうゆメーカーに製造委託したが、「植物性でつくるとうなぎのコクと脂身がなくなるので苦労したと聞いている」と明かす。
開発で苦労したのは、食感や見た目の再現と、皮と身の部分の物性の違いから、ほぼ手作りになることだったという。同社では、おせちや割烹・料亭向けの食材をつくる製造部に手作業が得意なチームがある。定番商品にする場合は同チームが手作業でつくっていく計画だが、秋冬は需要に対して供給が追い付かないため、「プラントうなぎ蒲焼」は夏場限定で販売した。
開発中の水産代替品では現在、いくらも販売できるレベルまで完成しているという。アルギン酸を固め、合成着色料を使わず、アスタキサンチンで色味を再現している。いくらは為替の円安の進行と漁獲量の減少により、今年はさらに価格が上昇する見通しで、スーパーなどから海鮮丼などに使う代替品で要望があるという。「まるで魚」シリーズ第3弾は来春、いくらの発売を検討しているというが、2月の恵方巻需要に間に合うように発売を早める可能性もあるとしている。
「プラントいかわさび」はナタデココが原料だ。あづまフーズはたこわさびを最初に開発した元祖メーカーだが、たこわさびの原材料をメインに動物性を使わずに風味付けしている。「代替たこを開発したいがなかなか難しい。珍味では最初にいかわさびを商品化し、いかの塩辛など海鮮珍味のプラントベースバージョンは開発中だ」としている。
〈大豆油糧日報2022年10月27日付〉