日清オイリオグループ「新たな価格での市場形成に成果、引き続き需要喚起とお客の課題解決に」/三枝理人取締役インタビュー
――上期(4~9月)を振り返って
新型コロナ感染拡大と歴史的な油脂原料の高騰が長期化しており、厳しい半年となった。
コストアップに対し、2021年度は計4回の価格改定を行い、今上期も4月、7月の計2回の価格改定を実施した。7月には汎用油に加えてオリーブオイル、ごま油、こめ油などの付加価値商品を含めた価格改定を実施したが、生活者や流通、ユーザーの皆さまにご理解いただき、食用油全般の価値構造を大きく変えることに取り組んだ。
差別性のある商品である家庭用の「日清ヘルシーオフ」、業務用の「日清スーパー長持ち油」、「日清吸油が少ない長持ち油」などの拡販を通じて、新たな価格での市場形成に取り組むとともに、新しい市場創造やユーザーの課題解決をオリーブオイル、ごま油、サプリ的オイル、こめ油、業務用の機能性油脂などの付加価値商品の積極的な拡販を推進してきた。
新たな価格での市場形成については、一般的な指標である日経の一斗缶相場が2020年10~12月が4100円だったのに対し、直近の2022年10月は6900円とkg換算で170円上昇している。家庭用の代表商品である「日清キャノーラ油1000g」の日経POSでの売価は185円水準から340円と、kg当たり155円上昇している。これらの指標からも取引先様各社にご理解をいただきながら一定の成果は得られたとみている。
――今後の原料相場の見通しは
現在の油脂原料の高騰は今後も継続すると考えており、その構造は3階建てと取引先様各社にご説明している。1階部分は世界的な人口増加に伴う油脂需要の増加だ。2階部分として、各国のCO2削減対策で食用油がバイオディーゼル燃料として積極的に活用が進められており、新たに大きな需要が出てきたことで、需給バランスが崩れていること。加えて3階部分として、熱波などの異常気象が世界各地で毎年発生している。
昨年熱波で大幅減産となったカナダの菜種の収穫は、今年はほぼ例年通りなので、3階建部分は収まってくるが、1~2階は構造的な問題のため、元の状態に戻るとは考えづらい。さらには歴史的な円安、物流費や資材コスト、ユーティリティコストなども上昇している。
世界的な天候不順では、オリーブ産地のスペインとイタリアが熱波で作柄が悪く、不作と予想されている。為替の問題も非常に大きく、引き続き価格改定をお願いせざるを得ない局面も発生するのではないかと思っている。
理解を得られた新たな市場価格の定着をベースに、「油脂を究める」ことで食用油の価値を高め、商品やプロモーションによる需要の喚起、ソリューション提案によるお客の課題解決に引き続き取り組んでいく。
〈家庭用は食用油の価値向上と継続的な市場拡大、業務用は3テーマで課題解決へ〉
――下期の方針を
油脂原料のコストは高止まりが続いている。食用油の価値向上をベースに適正価格での販売を継続し、各領域で需要喚起の施策に取り組んでいく。食用油全般の価値構造が大きく変わった中、生活者が自分ゴト化できる価値、ユーザーが採用したいと思えるソリューションを商品やサービスの提案を通じて届けることが当社の役割と考えている。
家庭用では、引き続き生活者の食に対する「健康」と「おいしさ」の2つの期待を、マインドの変化や食生活の変化と結び付け、「かけるオイルの進化」と「クッキングオイルの構造改革」によって、食用油の価値向上と継続的な市場の拡大を実現していく。キャノーラ油を抜き、ナンバー1商品となった「日清ヘルシーオフ」を牽引役とし、新たな価格ステージの形成に全力で取り組む。
業務用は新型コロナウィルスによる生活者の行動変容、人手不足やコスト上昇など外食・中食産業が抱える課題を解決するために、3つのテーマを設けて、ニーズ協働型発掘営業を進めることで課題解決の質を上げていく。
1つ目は「最終製品の品質向上」だ。具体的には、「日清麺さばき油」を活用した麺メニューの品質アップで、ほぐれやツヤ、コシなどの解決を提案していく。液状油でありながら油にじみの少ない「日清ベーカリーフライオイルL」を活用したドーナツの品質アップは、量販店のインストアベーカリー向けに提案していく。
2つ目の「コスト抑制」では、酸化上昇を30%抑制する「日清スーパー長持ち油」や「日清吸油が少ない長持ち油」、「日清スーパーデリカエース」などの拡販に取り組む。ユーザーサポートセンターによるフライオペレーションの最適化も提案していく。また、純正ごま油と同等の香りが特徴の「日清濃い口調合ごま油」を活用したコスト抑制の提案も行っていく。
3つ目のテーマは「生産性の向上」だ。ピローオイルによる作業性負荷の軽減、「日清素材のオイル」の活用による調理の事前準備や仕込み工程の短縮を提案する。「日清炊飯油」の活用によるご飯盛り付けの作業時間の短縮につながる提案にも取り組む。
〈大豆油糧日報2022年11月24日付〉