J-オイルミルズ「コスト抑制できる長持ち油『長徳』の提案に注力、採用件数は右肩上がりで増加」/富澤亮常務執行役員インタビュー
――2022年度上期(4~9月)の環境を振り返って
市場環境について、家庭用は、巣ごもり需要の反動減が大きく、業務用はコロナ禍から回復基調にはあるものの、2019年対比では依然大きく下回っている。
お客様に多大なご負担をお掛けしている価格改定については、厳しいコスト環境に理解いただきながらも、油脂の価値に見合った販売価格の実現という点ではまだまだ道半ばの状況で、全体として非常に厳しい上期だった。
――価格改定の進捗と市場構造の変化について
値上げの状況に関しては、歴史的な油脂コストの上昇を背景に、今年度も4月、7月と2度の価格改定を発表したが、環境については概ね理解いただいている。
市場構造変化の観点では、家庭用はクッキングオイル領域において、健康志向の高まりなどにより、キャノーラ油、サラダ油などの汎用油から高付加価値汎用油(ベーシックプラス)やこめ油へのシフトが進んだ。
業務用においては、長持ち機能により、得意先のランニングコスト低減だけでなく、作業負担軽減やオペレーションコスト低減にも貢献できる当社の独自技術「SUSTEC」を活用した「長徳」シリーズの提案に注力した結果、汎用油からのシフトが進んだ。
外食のお客様に関しては、メニューの価格改定が追い付いておらずご苦労されている。揚げ物メニュー自体を減らす動きや、油調済みの冷凍製品を使用するなどの工夫をされているところもある。ただ、本当においしいメニューを出そうとすると、店舗で揚げることになる。コストを抑制できる長持ち油の需要が増えており、「長徳」のテスト件数と採用件数は右肩上がりで増加している。
また、麺さばき油や炊飯油などの離型油は、経時劣化抑制による廃棄ロスの削減や、テイクアウトメニューの品質向上にもつながることで販売が伸びている。調理器具が汚れにくいため、洗浄作業の負担が軽減されるという点でも着目されている。
〈「スマートグリーンパック」取扱い店舗拡大、CFP認証は環境経営ニーズにも合致〉
――下期の重点施策は
ウクライナ侵攻の長期化や為替リスク、エネルギーコストの上昇などにより、価格については、今後上がることはあっても、下げられる環境にはないと考える。
家庭用は、2022年春に投入して売上が堅調に伸びている「大豆の油 健康プラス」の更なる販売強化を行う。また、昨年8月に発売した紙パック「スマートグリーンパック」シリーズは、環境負荷の低減だけでなく、使いやすさも評価され、取扱い店舗が拡大し、売上も増加している。今年は「焙煎ごま香味油300g」などをラインアップに追加し、品ぞろえを強化している。11月からテレビCMを全国放映し、一気に認知の拡大を目指す。
市場活性化の視点では、10月にJOYL「AJINOMOTO オリーブオイル」のテレビCMを投下、昨年好評を博した「カマンベールチーズのアヒージョ」のメニュー提案を実施した。テレビCMに連動した店頭展開を図ることで、オリーブ油の需要を拡大していく。
業務用は、長持ち機能により、お客様のコスト負担や作業負担軽減に貢献できる「長徳」シリーズの提案を継続していく。同シリーズは2022年6月、原材料調達から廃棄に至るまでの全ライフサイクルでCO2削減効果が認められ、カーボンフットプリント(CFP)認証を取得した。環境経営を意識したユーザーのニーズとも合致し、店頭でのコミュニケーション提案など同製品のCO2削減効果についての提案を強化し、コストダウンから更に一歩踏み込んで、得意先の売上拡大に貢献する提案を進めていく。
――今後の市場環境と原料コスト状況の見通しを
業務用市場は、第3四半期以降、インバウンド需要の回復と、「全国旅行支援」や「Go ToEat」など、経済を回していく政策が打ち出され、業務用市場の大幅な回復が期待できる。一方、家庭用市場は、まん延防止措置による行動制限があった裏年となるため、特に第4四半期はより厳しい環境になると予測している。原料コストについては、世界的な植物油の需要増加に伴う需給ひっ迫、ロシア・ウクライナ情勢に伴う原材料高騰とその長期化、日米金利格差などによる円安進行など、厳しい状況が継続している。
あくまで現時点での情報だが、オリーブ油の主要産地スペインでは、今夏の熱波の影響を受けて大幅減産が予測されている。クロップサイクルでの裏年であるイタリアでも減産が見込まれ、新穀オリーブ油の供給は世界的にひっ迫することが懸念されている。エネルギー価格の上昇も、トータルコスト上昇に拍車をかけている。
〈大豆油糧日報2022年11月25日付〉