昭和産業「引き続き価格改定の理解求め、価値提案型営業を進める」/山口龍也取締役常務執行役員インタビュー

昭和産業・山口龍也取締役常務執行役員
昭和産業・山口龍也取締役常務執行役員

――上期(3月期)を振り返って

業界全体で低調に推移する中、当社の出荷実績は家庭用、業務用、加工用ともに前年を下回った。課題解決型の営業を推進し、製粉部、糖質部と連携した営業活動に取り組んだが、需要回復が見込めない環境に加えて、価格改定も影響した。

――価格改定の進捗は

歴史的な原料高騰やエネルギー価格の上昇といった背景を丁寧に説明し、価格改定について理解してもらい、業態やエリアごとの差はあるものの概ね目標通りに進んでいる。だが、コスト上昇のスピードに追い付くまでには至っていない。

外食業界では、コロナの影響は幾分和らいだが、コロナ前の水準までは回復していない。原料・資材コストが上昇し、コストアップへの抵抗が強くなる中、長寿命油脂、「吸油の少ない天ぷら粉」や「打ち粉のいらない天ぷら粉」といった小麦粉の提案を同時に行い、課題解決型の営業を進めてきた。「吸油の少ない天ぷら粉」はコスト面の課題解決を提案する商品だが、油っぽさを抑えたいというニーズにも対応し、従来通りのおいしさも維持できる。

上期は継続的に価格改定を行う中、ユーザーに寄り添い、さまざまな課題に対し、提案活動を実施してきた。家庭用の価格改定についても、PB、NBともに速度の差はあるものの順調に進んでいる。

――下期の課題は

コストに見合った価格で販売すべく、引き続き価格改定の理解を求めていく。上昇する価格に見合った価値をお客様に感じて頂くために、ニーズの変化や多様化を捉えつつ、新たな価値を創造する価値提案型営業を進める。テイクアウトやデリバリー、中食が堅調な業務用では、油染み抑制により、時間が経っても商品価値が下がらないフライ用油脂や「打ち粉がいらない天ぷら粉」の提案を強化していく。家庭用の付加価値油脂であるオリーブ油、ひまわり油「オレインリッチ」、「健康こめ油」は、パスタやプレミックスとの関連販売に注力する。価格改定の浸透と物量の拡大を両面で行っていく。

〈汎用品の物量回復を期待、ボーソー油脂とのシナジー効果を最大化〉

――今後のコスト環境について

コロナの終息が見えず、食品全体で値上げが行われる中、10月から全国旅行支援が始まったことで、物量面では大いに期待している。一方で、油脂の原料相場は引き続き高値で推移しており、為替の円安、原油などのエネルギー価格、缶代の上昇などでコストは上昇している。よって油脂コストは高止まりしており、今後さらに上がる可能性を懸念している。

北米の大豆や菜種の生育は概ね順調で相場は落ち着いているが、中国の需要次第でどうなるかは不透明だ。注意を払っていく必要がある。価格改定は概ね順調に進んでいたが、物流コストや為替のコストアップ分が含まれていない。今後、適正な価格改定のお願いをすることもありえる。

「オレインリッチ」の原料は今期分の契約が済んでいる。ウクライナへのロシア侵攻は世界的なひまわり油需給に大きな影響を与えたが、ウクライナからの輸出再開、他国での増産などにより落ち着きを取り戻している。

――スペイン産オリーブの減産の影響について

当社もスペインから輸入しているため、作柄を懸念している。現在スペイン以外からの輸入は考えていないため、スペインにおける需給・価格の最新情報を収集しているところである。

――年末に向けての需要の見通しは

10月から人の流れが確実に変わっている。出荷動向も9月までとは異なっている。付加価値製品の提案を進めていくが、今後はコロナの動向を見ながら、年末に向けた更なる外食市場の活性化により、汎用品の物量の回復を大いに期待している。

――ボーソー油脂とのシナジー効果は

完全子会社となったボーソー油脂とは、当社社員とさまざまな分科会を設置し、課題解決に向けたシナジー効果の最大化に努めてきた。ボーソー油脂単独ではできなかったことも可能になった。20年度の時点でボーソー油脂は黒字化し、21年度には両社の販路を活用し、家庭用中心にこめ油が伸長した。22年度も21年度以上のシナジー効果が出ている。当社グループとして、収益力は非常に上がっている。

――油脂原料の安定調達のための将来的な取り組みは

菜種は昨年までカナダ主体で輸入していたが、オーストラリアからも輸入を強化している。菜種に限らず、原料原産地・供給サプライヤーの多様化について引き続き調査していきたい。

〈大豆油糧日報2022年11月28日付〉

媒体情報

大豆油糧日報

大豆と油脂・大豆加工食品の動向を伝える日刊専門紙

大豆油糧日報

大豆から作られる食用油や、豆腐、納豆、みそ、しょうゆを始めとした日本の伝統食品は、毎日の食卓に欠かせないものです。「大豆油糧日報」では、発刊からおよそ半世紀にわたり、国内外の原料大豆の需給動向、また大豆加工食品の最新情報を伝え続けております。昨今の大豆を巡る情勢は、世界的な人口増大と経済成長、バイオ燃料の需要増大により、大きな変化を続けております。一方で、大豆に関する健康機能の研究も進み、国際的な関心も集めています。そうした情勢変化を読み解く、業界にとっての道標となることを、「大豆油糧日報」は目指しています。

創刊:
昭和33年(1958年)1月
発行:
昭和33年(1958年)1月
体裁:
A4判 7~11ページ
主な読者:
大豆卸、商社、食用油メーカー、大豆加工メーカー(豆腐、納豆、みそ、しょうゆなど)、関係団体、行政機関など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送 *希望によりFAX配信も行います(実費加算)
購読料:
3ヵ月=本体価格29,700円(税込)6ヵ月=本体価格59,044円(税込)1年=本体価格115,592円(税込)