アメリカ大豆輸出協会 安定供給実現の基盤は“サステナビリティ”、SSAP認証の豆腐メーカーの戦略発信など取り組み実施/立石雅子日本副代表インタビュー

アメリカ大豆輸出協会・立石雅子日本副代表
アメリカ大豆輸出協会・立石雅子日本副代表

――アメリカ大豆輸出協会(USSEC)の2022年の活動を振り返って

年始にウェブサイトを一新した。その際、サステナブルフードの動画レシピを配信した。

新たな取り組みとしては、日本の豆腐の魅力を世界に向けて発信する動画を公開し、大豆油を使った料理教室をバーチャルで開催した。SSAP(米国大豆サステナビリティ認証プロトコル)認証マークを導入した大手豆腐メーカー2社に、革新的な製品を投入する最新戦略について語ってもらい、ウェブで情報発信を行った。

好評のミレニアル世代に向けた動画配信は、6月に第2弾の「大豆を訪ねて三千里」、9月には第3弾の「大豆仕掛けの晩餐会」を公開した。このドラマシリーズは3話で一旦終了するが、ミレニアル世代向けの新施策を企画中だ。

8月には日本豆腐協会と共催した「TOFUFUTURE PROJECT(日米大豆研究会)」の第1回視察で中西部訪問とサンディエゴでUSSECが主催したSOY CONNEXTに参加した。3年ぶりに開催された「全国豆腐品評会」と「全国納豆鑑評会」では、「アメリカ大豆サステナビリティ・アンバサダーアワード」を贈呈した。10月にはウェブサイトで消費者向けに健康やレシピ情報について発信する「ソイ・ウェルネス・ウェブマガジン」をスタートし、11月には3年ぶりに全国納豆協同組合連合会との共催で「納豆サミット」と「アウトルック・カンファレンス」をリアル開催した。

12月には日本で開催された国際栄養学会にUSSECのパートナーであるSNI-Global(国際大豆機能研究会)と「大豆の健康」についてのメデイアイベントを共催した。またSSAP認証を通じ、環境課題に貢献した企業2社に「アメリカ大豆サステナビリテイ特別感謝賞」を贈呈した。

製油業界では数次の価格改定が行われたが、消費者に価格高騰の背景などを伝える機会がないという声があった。日本植物油協会と油糧輸出入協議会に提案し、意識の高い主婦層が多く読む媒体で、価格高騰の背景について理解してもらうための情報発信を行った。

油糧協(油糧輸出入協議会)から、プラネタリー・バウンダリーという人類が生存できる安全な活動領域とその限界点がギリギリのところまで来ているという説明を受け、今後は地球規模での生態系と生物多様性のバランスを考えていくマクロ視点を持つことが必要であるというメッセージを発信した。

米国では森林伐採は行わず、大豆生産における土地の利用やCO2排出などをできるだけ減らす取り組みを目標立てて実施している。今後、より情報発信を強化していく必要があると考えている。2023年にUAEで開催される「COP28」(第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議)では生物多様性に焦点が当てられるが、大豆は世界規模で消費されている。産地でのサステナブルな取組みに関する認識が高まる契機になればよい。

〈安定供給に向けての情報発信、サステナブルな食材であることにフォーカスして配信〉

――2023年の食品大豆の取り組みを

引き続きサステナビリティが安定供給実現の基盤になっていることを可視化していく。豆腐や納豆、しょうゆなどの大豆加工業者は現在、不確定要素の高い調達環境におかれているため、情報収集を密に行っていく。

2022-2023年産の食品大豆は全体的に供給が減る見込みだ。さまざまな要因があるが、主には作付けの減少と干ばつよる供給ひっ迫だ。カナダも減産傾向にあり契約が難しく、前年と比較して供給は全体的によりタイトになりそうだ。

シカゴ相場が高止まりする中、農家向けのNon-GMO大豆生産(GMO=遺伝子組換え作物)のためのインセンティブ構築が非常に困難な状況で、プレミアムがシカゴ価格の上昇に追いついていないことだけでなく、GMO大豆とNon-GMO大豆の収量の差異分に追いつかないことがある。その他にも農家が加入している農作物保険への悪影響の懸念などもある。

種子の部分でもGMOの方が進化は早く、収量が顕著に良くなっている。あるサプライヤーによるとNon-GMOの単収は50~55bus/Aだったが、同じエリアのGMOは65~70bus/Aに達した。

日本の需要者は高たん白の白目大豆を求める傾向にあるが、白目大豆の種子の遺伝子が追いつかないことが根底にある一方で、黒目大豆の方が種類も豊富で種子も強く、一般的に収量が下がらない。現在の緊急状況をふまえ、ある輸出業者は調達戦略として、現在の品種ベースからスペックベースへの移行や、収量低下が少ない黒目大豆の利用促進が考えられるのでないかと提案して来ている。

日本豆腐協会はこれらの点を以前から指摘しており、中長期的な安定調達を目的とした「TOFU FUTURE PROJECT」を通じて検証をスピードアップして行く。

来春に予定しているイベントとしては、SSAP認証大豆製品を使った全国規模での料理レッスン、アメリカ大使館のスポーツ&ウエルネスイベントへの協力、ソイオイルマイスター検定、サステナビリティシンポジウム、 ニューヨーク州で開催予定のSOY CONNEXT へのチーム参加、具体的にはまだ言えないが新たなコミュニケーション戦略などを展開予定だ。

――USSECのホームページに公開した「大豆品種データバンク」について

供給者や地域といったカテゴリから、米国産大豆の検索が可能で、多くの業界関係者に閲覧されている。今後は豆腐の加工適性やにがりの情報、年次比較などもデータベースに反映していければ面白い。

――2023年の抱負を

調達環境が激変している今だからこそ、より業界や異業界と連携し、安定供給に向けて日米の大豆業界の関係強化・深化に取り組んで行く。また、引き続き大豆が人と地球の健康課題を解決するサステナブルで最強な食材であることを日本から発信し、需要拡大に貢献したい。

〈大豆油糧日報2023年1月23日付〉

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昭和33年(1958年)1月
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