【未踏のマーケティング】アサヒコ“メーカー、売り場、消費者”みんながハッピーになれる仕組みを構築/池田未央営業マーケティング本部長インタビュー

アサヒコ・池田未央営業マーケティング本部長
アサヒコ・池田未央営業マーケティング本部長

以前、菓子業界に身を置いていた池田未央営業・マーケティング本部長。豆腐業界とのギャップについて、新商品がなかなか出ないことを挙げている。差別化されていない結果、価格で商品を選ぶ消費者が多いという。
 
「豆腐を短時間で多く作り、いかに安い単価で売るかで勝負している企業が多い。豆腐業界にはマーケティングの発想があまりなかった。豆腐はもっと評価されて良い商品のはずなのに、なぜ消費者が離れてしまうのか考え、メーカー、売り場、消費者のみんながハッピーになる仕組みをマーケティングの力で構築し直しているところだ。豆腐の良さに気づいてもらえるこの仕組みが、業界を刷新するムーブメントになるのではないかと考えている」と話す。

〈「植物性たん白質源」として、豆腐の商品価値を改めて伝え直す〉

現在、豆腐・油揚げの市場は縮小傾向にある。食が多様化する中、みそ汁や冷奴など食べ方のバリエーションが乏しいことが要因の一つに挙げられる。一方で、池田氏によると「海外では、豆腐はヘルシーでイケてる食べ物と認識されており、植物性たん白源として肉や魚と同じように食べられている」という。

そこで、豆腐を伝統食としてではなく、植物性のたん白源として今の食生活に合う形に変え、商品価値を改めて伝えることで低迷した売上を復活させることができるのではないかと考え、「TOFFU PROTEIN」(トーフプロテイン)シリーズを立ち上げた。

「TOFFU PROTEIN」シリーズのうち、「豆腐のお肉」は豆腐から作ったミンチ状の100%植物性のお肉で、良質な不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、ジューシーで柔らかく、大豆臭が少ないのが特徴だ。

一方「豆腐のおやつ」は、豆乳のたん白質の粒子を細かくそろえることでとろけるような食感となっている。いずれも従来の豆腐、油揚げの生産技術と経験を生かし、現代人のニーズにフィットするさまざまな食感を実現している。商品特徴に合わせて異なる食感を生み出せるのは、1972年に創業し、50年以上豆腐を作り続けてきたアサヒコだからこそだ。

特に、セブンイレブンの「セブンプレミアム」ブランドで2020年11月に発売した「たんぱく質10g の豆腐バー」は、累計で3,000万本以上を売り上げた大ヒット商品だ。昨年から行田工場に新ラインを導入・稼働し、供給量も増えたことから、ナショナルブランドで「豆腐バー 旨み昆布」「豆腐バー バジルソルト風味」も発売した。

豆腐の主な購入層は60~80代と高かったが、「豆腐バー」商品は40~60代の購入が多く、購入層が若くなっている。加えて、豆腐は平均売価が70~80円と安く購入点数も少なかったが、「豆腐バー」は平均売価が128円、購入点数も家族の人数分が購入される傾向にある。

さらに、既存の豆腐商品と被らないのも利点だ。水物全体の売上が2ケタ伸長した店舗もあったという。アサヒコは今後も、形を変えた豆腐や油揚げを食べてもらうための取り組みに注力していく。商品面では、新たに「坦々肉味噌」の発売を予定している。BtoBにも進出し、22年6月からやよい軒に大豆ミートを提供している。

この取り組みは、「たんぱく質ダイバーシティ」を掲げて実施しているもの。日々の生活でシーンを問わず、手軽に植物性たん白質を摂取する提案だ。「TOFFU PROTEIN」シリーズにおいてもこの一環で、好きなものを選んで毎日食べられるよう、前菜からデザートまで数多くのアイテムをそろえ、植物性たん白質を手軽に補うことができるとしている。

さらに、「TOFFU PROTEIN」シリーズは共通してSSAP認証大豆を使用しており、環境負荷も少ない。「『自分の健康だけでなく地球の健康にも気遣える』という部分は、今後のキーワードになる。『TOFFUPROTEIN』のような新シリーズを発信することで、豆腐や油揚げの良さを再認識しながら食べてもらえることにつながるのでは」(池田氏)と期待を寄せる。

〈大豆油糧日報2023年2月7日付〉

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昭和33年(1958年)1月
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