太子食品工業 大豆に82年間向き合ってきたことを強みに、創業の原点に立ち返る/工藤裕平副社長

太子食品工業・工藤裕平副社長
太子食品工業・工藤裕平副社長

太子食品工業の代表取締役副社長工藤裕平氏は、「既存ドメインの深化」と、「新ドメイン・新商品」を両立させる「両利きの経営」を3年前から掲げている。

「既存ドメインの深化」では、現在の東北や関東以外にも販売地域を拡大していくほか、販売チャネルの拡大にも取り組む。「新ドメイン・新商品」では、「豆腐バー」などセミロングライフの商品開発が進んできたことから、国外マーケットも開拓していく。

太子食品工業が創業したのは1940年、納豆屋から始まった会社だ。創業以来82年間大豆に向き合い、大量生産のノウハウや、科学的な裏付けからおいしい大豆製品を製造できる技術を培った。

2012年には、豆腐業界初の日本食品工学会技術賞を受賞し、「新しい価値観を提示してきた」と話す。「大豆に対し、真面目に82年間取り組んできたのが当社の一番の強みだ。添加物を入れずに、大豆だけで作るのはそのDNAがあるからだ。世の中ではプラントベースフード(PBF)が話題になっているが、千年間大豆を食べてきた歴史の中で揉まれてきた技術を発展できればと思う」。

一方で、海外市場に展開する場合、現地に受け入れてもらうために商品をローカライズすることも重要だと工藤副社長は話す。将来的には、「味付いなり」や「なめらか食感豆腐バー」の海外展開を検討している。前者については「味が付いているから分かりやすいのだと思う。テイストを変えれば流行るかもしれない」とし、後者では「健康ニーズの高まりや、肉からPBFにプロテインシフトが起こっている。『豆腐バー』は和洋中の3つの味があるが、それをベースにローカライズしたい」と語る。

「われわれの『おいしい』を押し付けないことが大切だ。例えば中華街は世界中にあるが、現地ごとに味が違う。現地の食文化を尊重しながら、日本の伝統食の帰結を見つける必要がある」と課題を挙げる。

太子食品工業の持続的な成長のために、価値観が多様化した現代だからこそ「お客様の健康づくりに奉仕する」という原点に立ち返って仕事をしたいと工藤副社長は述べる。最近では、キッコーマンの「味わいリッチ減塩しょうゆ」を使って開発したたれ付きの「塩分30%カットうまい減塩納豆」を発売している。「なかなか定着しないが、キッコーマンは減塩しょうゆを市場に定着させるのに60年かかったとお聞きしている。われわれも諦めずに取り組み続けたい」と意気込む。

〈個人が成長でき、チームで最大限の価値を発揮できる企業を目指して〉

ローカライズの考え方や、粘り強く取り組む姿勢は、キッコーマンの茂木友三郎取締役名誉会長から学んだ。工藤副社長にとって、最も尊敬する経営者だという。日本経済新聞の「私の履歴書」で茂木会長が連載されたのを読んだのがきっかけだ。工藤副社長は当時、東京でサラリーマンを続けるか、実家に戻るか悩んでいたが、実家に戻ることを後押しした出来事だったと振り返る。茂木会長が執筆した『国境は越えるためにある:「亀甲萬」から「KIKKOMAN」へ』は、工藤副社長の行動指針となっている。

理想の企業像には、個人が成長でき、かつチームで活動したときに最大限の価値を発揮できることを挙げる。工藤副社長いわく、過去のコンサルタントの経験から、会社はプロフェッショナルの集まりであるべきだという。「ジグソーパズルのように人をはめることはできない。ジグソーパズルの枠を超えて成長する人間が必要だ」とし、そのために「仕事には厳しく、人には優しく」をモットーに、部下が言いたいことを言える環境を作るよう心掛けている。

【工藤裕平副社長プロフィール】
(くどう・ゆうへい)慶應義塾大総合政策学部卒。アビームコンサルティングのプロセス&テクノロジー事業部でシニアコンサルタントを経験したのち、2013年太子食品工業に入社。2017年に蔵王高原フーズ代表取締役社長、2021年に太子食品工業の代表取締役副社長に就任。

〈大豆油糧日報2023年3月23日付〉

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昭和33年(1958年)1月
発行:
昭和33年(1958年)1月
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