丸紅、米国のフードテック・インキュベーター「キッチンタウン」と出資契約締結、日本・アジア食品企業の米国進出を支援

キッチンタウンのラッセル・シュワルツCEOと丸紅・三木智之執行役員食料第一本部長
キッチンタウンのラッセル・シュワルツCEOと丸紅・三木智之執行役員食料第一本部長

丸紅は4月13日、米国の大手フードテック・インキュベーターのKitchen 51Ventures,inc.(キッチンタウン)との出資契約を締結した。

大豆ミートなどの植物肉製造をはじめとした日本やアジアのフードテック企業、食品企業の米国への進出支援、米国内のスタートアップ発掘やマッチングサービスを提供する予定だという。
 
丸紅としても米国におけるフードテック企業との協業なども視野に入れているとした。短期的な手数料ビジネスは検討しておらず、キッチンタウンの更なる成長、将来のスタートアップとの協業機会の探索を通じて、長期的に収益化を図っていく考えだ。出資額は非公表としている。

今回の出資契約締結の経緯について、三木智之執行役員食料第一本部長は、「2年前にフードテック関連の米国展開プロジェクトで、キッチンタウンに支援を依頼した時にさかのぼる」とし、「インキュベーターとしての実力はトップクラスと認識している」と強調した。「日本をはじめとするアジアにおいて、フードテック領域でのスタートアップ企業のグローバル支援、社会課題へのソリューション提供に貢献していく」と抱負を述べた。

キッチンタウンのラッセル・シュワルツCEOは、丸紅との取り組みについて、「当社の有するフードサイエンティスト、市場分析アナリスト、食品製造のエンジニアと、それぞれのチームを強化するだけではない。両社が相互にビジネスモデルやそれぞれの国の食文化、フードテックに関する知見・ノウハウの共有化を図ることで、さまざまな社会課題に対するソリューションを提供することが可能になると考えている」とした。

〈キッチンタウンは100社以上のスタートアップを支援、代替たん白系に強み〉

キッチンタウンは2013年12月にシリコンバレーで設立され、これまで100社を超えるスタートアップの支援を行ってきた。

日本のスタートアップにも複数社で支援実績があるという。シリコンバレー最大規模のフードテック・インキュベーターとして、サンマテオの本社工場を拠点に、マーケティング、商品開発、生産販売、経営などの支援に必要な各種設備、専門性の高い人材、幅広い知見を有している。大手企業に対しても食領域におけるイノベーション創出の支援を行うなど、幅広い分野で活動している。

キッチンタウンには、科学的な知見を持ったフードサイエンティストなど専門性の高い人材が所属しており、特に代替たん白系の支援に強みを持つとしている。昨年10月にはソーマに構える2つ目の工場でもサービスを開始している。

食品原料部の青野圭祐フードサイエンスチーム長によると、2013年から2021年にかけて、全世界のフードテック領域におけるスタートアップ数は3382社から8303社に、投資総額は10億ドルから390億ドルに増加しているという。一方で、スタートアップが成長を実現するには、マーケティングに加え、食領域特有の商品開発、量産化支援の構築など、さまざまなハードルが存在することから、「創業から目標達成まで包括的に支援するインキュベーターのニーズが高まっている」と説明した。

キッチンタウンは主に3つのサービスを手掛けている。1つはプロダクションで、専門設備や活動スペースの提供などの製造支援を行っている。2つ目はリサーチ&ディベロップメントで、レシピ開発、各種検査などの研究開発を支援している。3つ目はインサイト&ストラテジーで、マーケット調査やコンセプト設計などの戦略を立案している。

分野としては肉、水産、卵、油脂などの代替食品、フードロボットやEコマースなどのテクノロジー、アップサイクルなど特殊原料、消費材、ベーカリーといった幅広い顧客を持つ。また、グローバル食品メーカーの新商品開発やスタートアップとの協業におけるコンサルティングサービスも提供している。

青野チーム長は、「本契約を通して日本やアジアを中心としたフードテックスタートアップや食品企業の成長や事業推進、米国進出などのグローバルな展開を支援する。従来の枠組みにとらわれない、新たなイノベーション創出を通して社会貢献に寄与していく」とした。

〈大豆油糧日報2023年4月14日付〉

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