即席みそ汁市場動向、700億円に迫る勢いで拡大、時短・簡便でありながら差別化を
コロナ感染が再び拡大しつつあるが、外出自粛も緩和され、感染症法上の位置づけも原則として、今春から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行することなることが明らかにされている。
その影響で外食需要が高まっており、家庭内では時短・簡便・即食が求められるコロナ以前の状況に戻りつつある。ただ、内食需要が高まった際に、プチぜいたくで付加価値の高い食品を経験してしまった人には、それなりの味へのこだわりがあり、安く、多くだけでなく、さらにおいしさが求められてくる。時短・簡便でありながら、差別化を図っていかなければ生き残れない競争が再び過熱してくるだろう。
みそ市場では、ひと手間が必要な生みそから、即席みそ汁へシフトする人が増えている。即席みそ汁市場は拡大傾向で700億円に迫る勢いだ。大手みそメーカーでは、カップみそ汁や、粉末のフリーズドライみそ汁などをそろえ、商品バリエーションを増やしてきている。
オフィスビルにも人が戻り、昼食需要も戻りつつあることから、コンビニで販売しているカップみそ汁の売上も回復してくると予想される。傾向としては、生みそや具材をカップに入れて飲むスタイルではなく、粉末のフリーズドライでフタを開けたら、すぐにお湯を入れて飲めるタイプが売行きを伸ばしている。
ハナマルキの「すぐ旨カップ」シリーズはまさにそのタイプの商品で好調な売れ行きを示している。2022年度の売上はシリーズ全体で前年比20%増となり、毎年衰えず伸長している。2022年には、アーティストの「ずっと真夜中でいいのに。」とコラボレーションし、アーティストのメンバーが数量限定商品「すぐ旨カップみそ汁 揚げなす生姜風味 限定ニラ入り」を開発して、ライブチケットともに約3万5,000食を配り、話題を集めた。その後も反響が収まらず、同アーティストの公式通販サイトで、数量限定の抽選販売を実施し、さまざまなメディアに取り上げられたことで認知度が大幅にアップし、売上につながっている。また、今年は「すぐ旨カップ」シリーズのデザインをZ世代向けにリニューアルして、さらに攻めの姿勢を見せている。
〈みそや具材にこだわり、名店監修や旅を意識したコンセプトの商品も〉
即席みそ汁市場で圧倒的な強さを示してきたのが永谷園だ。「生タイプみそ汁あさげ 徳用10食入り」、「生タイプみそ汁ゆうげ 徳用10食入り」が毎月のKSP-SP売上ランキングでも1位、2位を独占している。これまでのトレンドを作り上げてきた存在で、多くのファンを確保している。同社の「毎日のおみそ汁5種のバラエティー10袋」もトップ10内にランクインしており、傾向としては、多食用でバラエティーが豊富な即席みそ汁の販売が好調に推移しているようだ。
生みそのトップメーカー、マルコメの即席みそ汁も好調に推移している。トレンドの具材をしっかりと押さえた即席みそ汁をそろえており、揚げなす、しじみ、あおさ、長ねぎ、とうふなど豊富なバリエーションが自慢だ。みその種類の豊富さもみそメーカーならではで、具材とみその組み合わせで、消費者の舌を飽きさせない商品をとりそろえているのが特徴だといえる。
差別化商品として、名店「つきぢ田村」田村隆氏監修の即席みそ汁もそろえている。こだわりつくした付加価値の高い商品を投入することで、富裕層からのファン獲得にも意欲的に取り組んでいる。
ひかり味噌もこだわりの即席みそ汁「味噌屋のまかないみそ汁」シリーズが前年比26%増と好調だ。同シリーズは「みそ、かつおぶし、具」のみを使用し、うま味調味料は一切不使用の究極にシンプルな即席みそ汁として訴求している。フレーバーはこのほかに「蔵出し信州こうじみそ」、「蔵出し熟成赤みそ」をラインアップしている。
各地の名産みそを手軽に味わえる生みそタイプの即席みそ汁「産地のみそ汁めぐり」シリーズも大きな反響を得ている。旅を意識した商品コンセプトが消費者の食欲を引きつけている。
〈大豆油糧日報2023年4月20日付〉