日清オイリオグループ、MCTオイルトップメーカーとして拡販、素材提供し市場拡大【未踏のマーケティング】
家庭用のMCTオイル市場は2017年度時点で4億7,000万円だったが、2022年度には24億6,000万円と順調に拡大している。
日清オイリオグループは2022年度時点で53%のシェアを持つトップメーカーだ。BtoBで素材としてもMCTを供給しており、最近ではMCTを配合した加工食品が食品メーカー各社から続々と発売され、カップスープ、チョコレート、半生菓子、ビスケット・クッキーなど、食用油以外のカテゴリでも関連商品は拡大傾向にある。
メディア露出も増えており、今後さらなる拡大が期待される。家庭用とは別に2つ目の軸では、低栄養・要介護高齢者向けのエネルギー源として病院施設での販売に力を入れており、「エネプリンプロテインプラス」などのエネルギー・たん白質補給食品も好評だ。食品事業本部の大亀淳一郎ウェルネス食品事業戦略部長と、長門石亮ウェルネス食品課長にMCTの今後の市場拡大に向けた施策を聞いた。
現在、日清オイリオグループのMCTは家庭用商品と病院施設向けの2つの軸で展開している。元々、MCTは40年以上前から、病院でたん白質を摂取できない腎臓病患者のエネルギー源として使われてきたという。日清オイリオグループは家庭用としても発売を開始し、2021年秋には「日清MCTオイルHC」が機能性表示食品となったことで、ますます注目を集めるようになった。
MCT市場拡大の背景として長門石課長は、CMをはじめとしたコミュニケーションを長年展開してきたこと、各種メディアでMCTの露出が増えていること、MCT入りの加工食品が増えてきたことを挙げる。
特に2020年度は影響力の大きいテレビの情報番組で取り上げられたことを機に大きく伸び、2021年度はその規模をキープしつつ、2022年度には約25億円と順調に拡大してきた。日清オイリオグループのシェアも50%以上をキープし、トップメーカーの立場を維持している。一方で、最新のMCTの認知率は約39%と高まっているものの、「今後もさらに伸びる」と期待は大きい。
〈機能性表示食品「日清MCTオイルHC」のさらなる拡販、BtoBtoC販売にも注力〉
日清オイリオグループ独自の施策として、MCT入りのドレッシングやマヨネーズタイプの商品も投入し、消費者がより手に取りやすい環境を整えてきた。
「日清MCTオイルHC」は90gと200gをそろえるが、90gが売上の7~8割を占めている。一方、伸び率では200gの方が大きいという。大亀部長は「ロイヤルユーザーが増えてきた」と手応えを得ているが、「食用油としては高額な商品のため、なかなか販促に入れにくい。200gの売上をどう伸ばしていくか。手探りで新しいことに取り組む」と話す。
秋冬に向けては2つの施策を展開していく。長門石課長は、「1つは既存の商品にポーションの景品を付けて購買のハードルを下げる。もう1つは、今年の4~6月に実施した電子マネーが当たるキャンペーンの応募数が多かったので、もう一度実施したい」と述べる。キャンペーンでは、電子マネーが応募したその場ですぐに当たるのが好まれるのが最近のトレンドなのだという。
また、「テレビCMに起用した小芝風花さんの什器やPOPで売場を飾り、華やかに目立つようにしていきたい」と語る。
家庭用のMCT市場については、「無味・無臭の健康オイルなので、アマニ油と肩を並べる市場をつくりたい」と目標を掲げる。大亀部長も、「家庭用の食用油市場は、かけるオイルの習慣化でアマニ油とともに市場を拡大していく」と力を込める。
MCT入りの商品は2021年度が30品、2022年度が43品、2023年度も続々と上市が予定されており、食用油以外のカテゴリでも増加している。
長門石課長は、「MCTを素材として供給するBtoBtoCの営業にも力を入れていく。今までは当社が素材を持っていくだけで、ユーザーはMCT市場のことは分からなかった。BtoBで終わっていたが、例えば小芝風花さんのCMを展開することなど、MCTの市場の活性化に当社がどう取り組むかといったBtoCの話を盛り込み、MCTを採用時にBtoC市場はこうなっているという見通しを説明し、採用を働きかけていく。BtoBの商談ではなく、BtoCのこともセットで行うのがBtoBtoCだ」と説明する。
また「日清MCTオイル」は、2023年夏に、新たな機能性表示を消費者庁に届出。『本品には中鎖脂肪酸(オクタン酸、デカン酸)が含まれます。中鎖脂肪酸(オクタン酸、デカン酸)はBMIが高めの方のウエスト周囲径の減少、体脂肪や内臓脂肪を減らすことが報告されています。BMIが高めでおなかの脂肪が気になる方に適した食品です』と公表された。
BtoBtoCの営業において「体脂肪やウェストサイズを減らす」だけでなく「脂肪の燃焼を高める」というヘルスクレームについても訴求していくとしている。
〈低栄養・要介護高齢者向け食品として病院施設で注目〉
大亀部長は、「MCTオイルの販売は2つの軸を持っている。家庭用ともう一つは、低栄養・要介護高齢者向け食品としての販売に力を入れている。病院・施設ではフレイル(加齢による心身の衰え)やサルコペニア(加齢による筋肉量の減少)が課題になっており、エネルギー、たん白質が注目を集めている」と述べる。
お粥などに「日清MCTオイル」を使った場合、油浮きがあると見た目が油っぽくなる。大亀部長は「高齢になると油浮きは抵抗がある人が多いが、『日清食事にプラスMCTオイル』は油浮きしない商品だ。病院施設での採用件数が伸びている」と、食材になじみやすい商品もラインアップしていることを紹介する。乳化剤を入れることで油が混ざりやすくなるのだという。
MCT6gを配合した栄養補給食品「エネプリンプロテインプラス」は、「カップタイプデザートの業界でエネルギー密度が一番多い」(大亀部長)と強調するように、1g当たり4kcal、1個で160kcalのエネルギーを手軽に摂取できる。賞味期限は1.5年と長いので災害時にも役に立ち、日本災害食の認証も取っている。
大亀部長は、「病院・施設ではエネルギーが着目されて、MCTは最良の油との認識が高まっており、売上が伸びている。もっと伸ばして、より多くの人に提供していきたい。味の面でもおいしいと好評だ」と強調する。8つのフレーバーがあり、チョコレート味、あずき味、イチゴ味、バナナ味の順で人気だという。ドラッグストアの介護食コーナーでも販売されている。腎臓疾患のある人向けには、たん白質ゼロの「エネプリン」もそろえている。
〈大豆油糧日報2023年9月12日付〉