エイコー食品、納豆「極光」「つゆだくわさび黒豆」など展開、大阪・門真から納豆の可能性を広める
エイコー食品(大阪府門真市)は「極光(きわひかり)」ブランド、「つゆだくわさび黒豆」など、「味にも価格にも厳しい大阪で鍛えられた」糸引き納豆を主力に、真空フライ加工のドライ納豆も手掛ける。
6月には、ドライ納豆を活用して近畿大学経営学部の古殿幸雄ゼミと共同開発した「納豆屋さんの納豆カレー」(レトルト)を発売した。新たにキッチンカーにもチャレンジし、地元・門真のマルシェでも展開した。門真周辺にオープンした食品スーパーの売り場には、地場商材として特設コーナーを設置されるようになってきた。佐藤光晴会長は「門真から納豆の可能性を広める」と意気込む。
「納豆は日本が世界に誇る伝統発酵食品。納豆を世界へ発信することを念頭に置いて事業展開している」。佐藤会長はそう切り出した。佐藤会長は弟の佐藤勝彦社長とともに家業の納豆屋を継ぎ、2008年にエイコー食品を設立した。「とにかくおいしいものを作ろうと考えた。どうやったらおいしいものができるか」模索を続けてきた。
2010年に実施された「第15回全国納豆鑑評会 京都大会」では、特別賞に選ばれた。「日本一に選ばれた内藤食品工業(北海道室蘭市)の内藤孝幸社長にダメ元でおいしい納豆をどう作るのか尋ねた。同業者なのに丁寧に教えてくれ、最後に、『納豆には人柄が出る』と。新しい考え方、価値観だった」と振り返る。「人間が携わって作るものだが、限界がある。目に見えない納豆菌の声を聞き、力を借りて作っている。そういったことが人柄につながるのかもしれない」。
〈世界に向けて良いものを求められる形で、NYタイムズスクエアに打って出るのがゴール〉
主力商品は「極光(きわひかり)」ブランドだ。高質スーパーを中心に採用されている。同ブランドなどの糸引き納豆に加えて、真空フライ加工のドライ納豆の製造を2021年から始めた。糸引き納豆を真空状態で食用油を使って低温フライ加工して開発した。納豆菌は生きたままで、独特の匂いや雑味がなく、大豆の風味や甘味を引き出し、歯ごたえのあるザクザク食感を実現。3カ月以上常温保存できる。
2018年の大阪北部地震の際、関西納豆組合を通して、調理不要で栄養豊富な納豆を避難所に寄贈しようとして、『冷蔵庫が使えない』と断られた経験も開発の背景にある。
「世界に向けて発信したくても、賞味期限は短いし、冷蔵設備もいる。また、日本にも納豆の匂いやネバネバが苦手な地域があるように、海外の方にも受け入れられない可能性も。納豆の良さをより多くの人に広めるため、求められる形にしないといけないと考えた」。
ドライ納豆を世に広める方策を思案し、近畿大学へ相談。古殿幸雄ゼミとコラボする機会を得た。2023年1月、学生が考案した「ドライ納豆入りグラノーラ」を、6月には「納豆屋さんの納豆カレー」を発売した。メディアで多数取り上げられ、知名度が上がった。
要所で力となってくれる人物に出会い、「人に恵まれている」と感謝する。
佐藤会長は、「納豆は世界中に広まっても誰も困らず、むしろ喜ばれる」と力を込める。「体に良く、調理不要で誰でも簡単に食べられ、幅広い層が購入できる価格。容器を工夫すれば環境負荷も比較的少ない。原料は大豆と納豆菌と水、製造工程もシンプル。比較的少ない設備資金で工場をつくれる。地域にも貢献できる」。最後に、「夢は言葉にしたほうがいいと教えられた」と少し照れながら、「NYタイムズスクエアに打って出るのがゴール」と笑顔を見せた。
〈大豆油糧日報2023年12月21日付〉