日清オイリオグループ、植物油の加熱で動物性香気成分が生成するメカニズムを解明、オンライン国際科学ジャーナル「Food Chemistry:X」に掲載
日清オイリオグループと東北大学の研究グループは、パーム油やココナッツ油など飽和脂肪酸を含む植物油を加熱することで、動物性食品のおいしさを司る香気成分が生成するメカニズムを解明した。
この知見は、植物油に含まれる飽和脂肪酸から、動物性食品のおいしさを意図的に創り出すことに利用できる可能性があるといい、プラントベースフードのおいしさ向上などに役立つことが期待されるという。研究成果は、2023年12月19日にオンライン国際科学ジャーナル「Food Chemistry:X」に掲載された。
大豆油や菜種油などに多く含まれる不飽和脂肪酸は、光や高温などで比較的酸化されやすいが、パーム油やココナッツ油などに豊富に含まれる飽和脂肪酸は、酸化されにくい特徴を持つとされていた。ただ実際は、飽和脂肪酸でもその一部が加熱の過程で酸化され、動物性食品のおいしさを司る香気成分のメチルケトンや、乳製品や牛肉などに含まれる風味成分のラクトンを生成する可能性が示唆されていた。しかし、この香気成分の生成メカニズムを解明する研究は、その困難さのため、1980年頃から今日に至るまで途絶えていたという。
日清オイリオグループの研究グループは、半世紀ぶりにこのメカニズムを解明することを目指し、共同研究を実施した。まずは先行研究を徹底的に調査し、飽和脂肪酸の中でも、長さが中程度の中鎖脂肪酸がメチルケトンやラクトンを効率良く生じさせることができるという仮説を立てた。実際に中鎖脂肪酸を加熱すると、いくつかの酸化物が生じたという。さらにこの酸化物の分解により発生したと考えられる甘い香りを示す成分を分析した結果、メチルケトンやラクトンだと判明した。
これら香気成分の生成メカニズム解明のため、最先端の技術を用いて、中鎖脂肪酸の酸化によりできた酸化物を構造の違いによって分け、それぞれを加熱した際にどのような香気成分が生じるかを調べた。その結果、中鎖脂肪酸から、特定の構造を持つ酸化物を介して、メチルケトンやラクトンが生成することを見出したという。
〈大豆油糧日報2024年1月22日付〉