【USSEC・立石雅子日本副代表に新年方針を聞く】SSAP認証は制定10周年に、2023年は原料高騰など大豆も大きく影響、米国現地イベントを本格的に再スタート
アメリカ大豆輸出協会(USSEC)は2023年、米国の現地イベントのリアル開催を再スタートする年となった。
5カ年計画の「豆腐フューチャープロジェクト」は、作付が懸念されたNon-GMOの調達セミナーから開催し、豆腐メーカーに品種やNon-GMOのについての最新情報を配信した。2024年は第3回を開催する。
サステナブルな農法で育てられた米国大豆を、安心・安全に各国に届ける認証を受けた仕組みSSAP(米国大豆サステナビリティ認証プロトコル)は2023年、制定から10周年を迎えた。SSAP認証マークを付けた日本の大豆食品は増加傾向にあり、セブン-イレブンのPBでは「豆腐バー」に続いて、新たに納豆にも採用されるという。立石雅子日本副代表に今後の活動方針について話を聞いた。
――2023年の取り組みを振り返って
2023年は原料高騰、為替相場の変動、地球温暖化による天候異変など、大豆も大きな影響を受けた年であった。4月に、2020年3月に米国が発令した「国家非常事宣言」が解除され、現地イベントも本格的に再スタートする年となった。
5月には、世界のオイルマイスターを集めたイベント「U.S.Soy International OilMasters 2023」を日本から初めて派遣した。日本豆腐協会と共催の「TOFU FUTURE PROJECT(日米大豆研究会)」の第2回として米国の産地や施設を訪問した。「日米パートナーシップ・プログラム」は日米交互で開催しており、2023年は米国で開催した。
〈「豆腐フューチャープロジェクト」第3回実施、業界ニーズの最大公約数を伝えていく〉
――2024年の取り組みは
納豆関連では、秋に米国で「納豆サミット」を開催する。USSECと全国納豆協同組合連合会で共催しており、前回は2022年11月に日本で開催した。サプライヤー、生産者、納豆メーカーとの関係強化と課題・機会について共有し、話し合うイベントだ。植物油業界との「日米パートナーシップ・プログラム」は、今年は日本での開催となる。「豆腐フューチャープロジェクト」は第3回を実施する。オイルマイスター検定・米国研修も行う。
――「豆腐フューチャープロジェクト」のこれまでの手応えについて
現在5カ年計画で実施しており、2022年、2023年と米国で実施してきた。豆腐業界では大きな変化があった。業界再編の渦中にある米国でも2023年春にNon-GMOの必要量を作付できるか強い懸念があった。
そういった状況を背景に、USSEC本部はNon-GMOの調達セミナーを開催し、Non-GMO農家の考えや品種の現状について情報共有し、産地や大学でもデイスカッションした。豆腐メーカーから、商社に頼るだけではなく、自分たちで品種を見極める必要があるということで、お声がけいただいたのが発端だ。
メーカーの経営者が自らデータを基に品種を選択できるようになることが目的だ。これまでメーカーはどちらかというと受け身で、届いたものを分析していたが、能動的に探す動きにつながればいい。USSECもホームページ上で食品大豆品種のデータベース提供、大豆を研究している大学視察、サプライヤーとの交流の機会を設けるなど、そういった枠組みを強化している。初夏には米国の研修機関と連携し、米国の食品大豆の専門家が一堂に会する教育プログラムへの日本からの有志派遣を企画している。
大豆の品種開発には5~7年かかる。毎年、膨大な数の品種が試験栽培されるが、商業化されるのは全体のわずか1%程度だと言われる。両国にとってより適性ある品種開発の効率化を目指し、日本の豆腐業界のニーズの最大公約数を伝えていけるようコミュニケーションを最適化する。関係者で話し合いながら形にして行き、成果によっては5カ年計画を超えて継続する。納豆でもこういった品種に焦点をあてたプロジェクトを実施する意義があるか議論している。
ただ、納豆の品種自体が特殊で、豆腐と異なり大豆を丸ごと残すためスペック要求が厳しく、発酵過程も挟むのでより複雑難解になる可能性もある。例えば、鑑評会で受賞した納豆に使われる大豆の分析、データ化が案として出ている。しかし、それを実際に生かしていけるかはやってみないと分からない。
納豆業界でもたん白質や糖、基本的なスペック、適性などを調べていると思うが、どちらかというと外観や色が重視されるためだ。ただ、全体的に米国大豆の品種の加工適性を高めていくための情報共有はできるのではないかという話はしている。後は、関係者と話し合い実施の有無を決めていく。
――大豆アニメの続編の製作は
ドラマと違って、アニメだと反響がなかなか伝わってこない。若年層からは好評だ。今年はもう少し発信を増やし、認知度アップに取り組む。昨年は3話製作したが、さらに5~6話作る予定で、すでに話合いを重ねている。新キャラも登場する。このほか、春に親子でサステナブルな米国大豆について理解してもらう料理イベントを予定している。そういう場でアニメを放映し、キャラクターにもリアル登場してもらう予定だ。
〈SSAP認証マークはセブン&アイPBの納豆に採用、Non-GMOは11年比15%増に〉
――SSAP認証マーク付与商品の拡大に向けて
SSAPは2013年に策定し、2023年に10年目を迎えた。2024年から特に、サプライチェーン全体でサステナブルなパッケージを求める動きが顕著になっている。
1月末からはセブン&アイホールディングスのPBで、SSAP認証マークを付けた納豆を発売する。コンビニのプレミアムPBとイトーヨーカドー、ヨーク、ヨークベニマルといったスーパー部門などで採用される。昨年からマークを付け始めた「豆腐バー」も売れている。
豆腐の購買層は高齢者が中心だが、若い人にも手軽に食べてもらえる革新的な製品に付けてもらった効果は大きい。米国の関係者にも非常に受けがいい。みそやしょうゆなどその他の大豆製品のPBにも認証マークが広がれば大豆の課題貢献の場がさらに広がると考えている。
――新たな取り組みは
2023年はオンラインだったが、今年はリアルで「サステナビリティ・シンポジウム」を開催する。サステナビリティ関係では日本植物油協会(日油協)や油糧輸出入協会(油糧協)と連携強化している。
2023年の8月には、「日米パートナーシップ・プログラム」開催時に日油協、油糧協とともに国連を訪問した。食料安全保障と環境問題、持続可能な供給を確保するための国際的な協力の重要性、サプライチェーンの持続性、国連のSDGsなど、多角的に話しあった。
今後、3団体で日本の最重要課題となっている「スコープ3」の情報開示に向けて取り組む。現在、連携を密に検討していくためのロードマップを作成中だ。業界が一致団結して取り組むことで発信力が増し、日本の大豆業界の国際的な評価も高めることができると期待する。
大豆食品では、米国大使館の協力を受け、FOODEXで納豆業界のコラボイベントを行う。また、昨年から関係者と温めてきた豆腐業界とのコラボ企画をスタートする。いずれも需要喚起を目指しつつ、サステナビリティに関する発信も行う。3月には韓国と東南アジアからの依頼を受け、日本の食品市場、サステナビリティの現状やSSAPの普及状況について、現地でプレゼン予定だ。SSAPマークを使用頂いている製品の海外市場でのPRにも繋がればいい。
――今年のNon-GMO大豆の作付見通しは
2023年は懸念事項の多い年だったが、米国の農家からは必要なものは作付できる状況と聞いている。USSECが毎年、行っている「Non-GMO作付け調査」でも、76%の生産者が同じレベルの作付けか増やすと回答し、減らすと回答した生産者は11%だった。
現在の米国のNon-GMOの作付け比率5%(米農務省2023年)という数字は今後も同じレベルで推移を続けると見ている。少し遡ると2011年のNon-GMOの作付け比率はすでに6%で、これまでの11年間、5~7%の範囲内で推移している。一方で、この間、米国大豆の生産量全体は38%増加している。単純計算で2023年のNon-GMOの生産量は581万t、11年より15%増えている。Non-GMOの作付け比率は小さく感じるが、母体が大きく、継続的に増加しているため、他国と比較してもサステナブルな供給体制といえる。
〈日本におけるシェア77%で前年微増、SSAPの価値を感じてもらえる努力を続ける〉
――気候変動の今後の影響について
2023年は世界的に観測史上最も気温の高い年となるなど、私達の日常レベルでも気候危機はますます顕在化している。一方で、大豆の生産者に聞いてみると、毎日が天候との闘いのため、今さら大きな影響を受けるという懸念を持つ生産者は少なく楽観視している。それだけ、日々の生産慣行の中に、自然な形で対策が組み込まれているからだろう。
不耕起栽培や輪作、カバークロップなどのサステナブルな生産方法に加え、強靭な品種選定、ドローンやiPadなどの技術を駆使し、リスクを早い時期に特定、最小化していくなど、農場レベルでの気候変動対策は整っている。中西部の広範囲によほど大きな自然災害が来ない限り影響は少ないのかもしれない。
――SSAPの今後の更なる普及について
USSECとして、前述のような農家の取組みを発信し、引き続き消費者への理解につなげたい。大豆がCO2削減など、地球環境に配慮して作られていること、大豆を消費することで課題解決に貢献できるということを消費者目線で伝えていく。業界が連携して発信すれば、相乗効果で業界の価値向上、市場での競争優位性を築く取組みの一環になるかもしれない。もはや世界の消費者や取引先は企業、業界のそういった取組みに注目するようになっている。チャンスと捉え、どうせやるなら早くやったほうがよい。
原料調達の部分は、最終製品と異なり消費者にサステナブルな部分が見えにくいが、2022年は日本における米国大豆のシェアは77%で前年微増となった。この状況に甘んじず、USSECのビジョン『アメリカ大豆が世界中で信頼され、持続可能な栄養とエネルギー源となることを目指す』に向けて、地道に発信を継続、基本を知っていただき、SSAPについても、価値を感じてもらえるようになるまで努力を続けていきたい。あらためて大豆業界のみなさまにも協力をお願いしたい。
〈大豆油糧日報2024年1月30日付〉