みそ業界、米価高騰で更なる値上げも、暴落経験から備蓄米放出には二の足
〈2028年産の加工用米生産拡大を要請、日本の伝統的な食品産業の存続に力注ぐ〉
中堅みそメーカーを中心に更なる値上げの決断を迫られている。昨年は原料の大豆価格が高騰し、値上げをしたところも散見されたが、なんとかこの苦境を乗り越えることができた。それは、米の価格が高くなかったからだ。
しかし、2024年は高止まりしている大豆に加えて、米の価格も高騰し、包装資材や運賃、人件費なども高騰していることから、やむを得ず、更なる値上げに踏み切らなければならないメーカーも出てくる可能性がある。
令和5年産の米の作況は天候を要因として芳しくなく、みその生産に必要なふるい下米の価格も高騰している。価格の高い加工用米を使ったみその生産は避けたいところで、そうなると、製品価格の値上げをしなければ対応できない状況に陥る。
こうした状況を打開しようと、全国味噌工業協同組合連合会(全味)の永江隆志副会長が4月11日、坂本哲志農相に、加工用の政府備蓄米の販売を要請した。だが、坂本農相からは備蓄米の販売に対する明言は聞かれなかった。
それは、平成23年の東日本大震災による影響を受けて、平成24年4月、6月、10月、平成25年4月の計4回にわたり、備蓄米を販売したことで、米の価格が暴落した経験があるからだ。特に国産の令和5年産は計画よりも生産量が大きく下回り、国産のふるい下米も減産となったことで、原料米を確保することが難しく、令和6年産までの期間どう凌げばよいのかと頭を抱えるメーカーも少なくない。
もともと、国産米は、日本の人口減少から、全体的に米の生産を抑制する方向に進んでいる。ただでさえ、米の生産量を抑制しているにもかかわらず、米価が暴落しては、米穀販売業者の存続にも影響を与えかねない。そのため、政府としては、下落の危険性がある、備蓄米の放出を受け入れて販売を促すことに二の足を踏んでいることが推測できる。
米菓、和菓子、みそ、日本酒、穀粉などで組織する全国加工米需要者団体協議会も4月19日、稲作生産者に向けて2028年産加工用米の生産拡大を要請する。国産米の安定調達に向け、加工用米の計画的な生産に取り組んでもらいたい思いを呼び掛け、日本の伝統的な食品産業の存続に力を注いでいる。
〈2024年4月17日付大豆油糧日報〉