日清オイリオグループ、価値訴求による「価格均衡点の形成」に注力、23年度は市場平均を上回る成果/【役員に聞く】三枝理人取締役専務執行役員食品事業本部長
――23年度の総括は
23年度のコスト環境は多くの変動要素を抱えていたが、オリーブオイルやごま油など一部商品で価格改定を行った。それと共に目指すべき合言葉として、価値訴求による「価格均衡点の形成」に注力しながら販売量の確保に努めてきた。当社はユーザーや生活者の変化に対応すべく、付加価値型商品群の積極的な拡販によって、「新しい市場創造やユーザーの課題解決」を推進している。ユーザーや生活者の理解を深め、求められているものをしっかりと捉えて提案し続けたことで、23年度は市場平均を上回る成果を得られた。
――業務用と家庭用ごとの振り返りを
23年度上期の業務用市場は、原料コストの環境が落ち着きを見せる中、販売においては過度な価格競争に陥る局面がこれまでと比較すると少なく、全体としては一定の相場水準を維持した。しかし、年明け以降はバルクを中心とした競合他社の値下げ基調が強まりつつあり、一部のユーザーでは原料コスト以上の値下げが散見されている。
当社は適正価格での販売に注力すると共に、顧客課題をソリューションする付加価値型商品の提案を強化し、「日清スーパー長持ち油」、「日清吸油が少ない長持ち油」など差別性のあるフライ油や、さまざまな調理シーンにおいて作業性改善、メニューの品質向上に繋がる炊飯油、麺さばき油などの機能性油脂の拡販に取り組んだ。各エリアで設定したターゲットユーザーの新規開拓や、中小外食企業を主な販売先とする卸店向けの販売量回復に努め、業務用のトータルの販売量は前年をわずかに上回った。
家庭用については、適正価格販売による新たな価格ステージの定着に注力し、「かけるオイル」や「味つけオイル」による食用油市場の活性化、「クッキングオイルの構造改革」に取り組んだ。販売量は前年度には届かなかったが、市場同様のトレンドとなった。
〈「業務用CDN推進部」設置で価値創造提案の強化、機能性油脂の拡販で利益水準底上げ〉
――今期の施策要点と新たな取組みについて
業務用は引き続き、既存得意先の販売量の回復が課題だ。既存の卸店様と一体となって失地回復に努めるとともに、当社が持つ優位性、差別性を顧客にとっての価値に変換することで新規の需要獲得に努めていく。
具体的には、外食店における「売上拡大」「生産性向上」「労働環境改善」といった課題に対して「ニーズ協働発掘型営業」を深化させる。また、これまで以上に広くユーザーとの接点を拡大し、コミュニケーション機会を増やしていくことで潜在的なニーズを捉え、課題解決の質を向上していく。
今年4月から「業務用CDN推進部」を設置した。潜在ニーズの掘り起こしを起点とした課題解決提案を基軸とし、新たなお客様との信頼関係の構築、取引拡大に繋げていくためだ。各支店の業務用営業が行う課題解決提案をサポートする部隊という位置付けで、ユーザー様が抱える油まわりを中心とした調理全般の課題について熟知する営業の人間を配置している。いかに課題を掘り下げ、的確な提案を行っていくかをアドバイスし、支店営業と一緒になってお客様にとってより質の高い価値を提供していくことを目指す。
販売量の回復は大きな課題だが、単に価格対応して販売していくことではない。ベースにあるのは、汎用油はもちろん、機能フライ油や炊飯油を中心とした機能性油脂を拡販することにより、利益単価の水準の底上げを図っていくことだ。
家庭用については、原料相場の下落に応じて販売価格も落ちてきている。日経POSデータでは、20年末の値上げ前は185円の水準だったが、直近では272円と下がってはいるものの、値上げ前より87円上昇している。
新型コロナウィルス感染拡大から日常に戻り、さまざまな食品の価格が上昇している中で、クッキングオイルの大幅な販売量の増加が期待できないことに加え、これまで家庭用食用油の市場を牽引してきたいわゆる付加価値型の伸長も一服感を見せている。
これらの課題にどのように解決策を見出していくかだが、やはり「クッキングオイルの構造改革」が重要だと考える。「日清キャノーラ油」だけではなく「日清ヘルシーオフ」、「日清キャノーラ油ナチュメイド」、さらには新商品の「日清ヘルシークリア」を加えたことで、生活者の方々への価値提供とともに、各流通の皆様の課題に対する販売提案をきめ細かくしていくことが可能になると考えている。
もちろん、付加価値型商品の提案・拡販にも引き続き取り組んでいく。市場を活性化させる新商品の発売や、おいしさ・健康情報の発信を継続することで間口の拡大を図っていく。特に当社が力を入れるMCTオイルに関しては、多様なターゲットに向けた価値を届けることのできる素材として引き続き注力していく。
――今後のオリーブオイルの位置づけについて
最大の生産国スペインが2年連続不作となった影響は非常に大きい。当社はこれまでもBOSCOブランドと日清ブランドでサプライソースを複線化し、安定供給に取り組んできたが、想定外の未曽有の事態に直面したことで、一部商品の休売や出荷調整をせざるを得ない状況となり、皆様にご迷惑をおかけすることになった。この経験を糧にし、原料調達・デリバリー・在庫・生産体制を改めて見直し、サプライチェーンをより強靭なものにしなければならない。
――4月からの物流24年問題による影響は
基本的には4月1日から、家庭用も業務用もほぼDay2に移行した。
〈大豆油糧日報2024年4月25日付〉