昭和産業、オレイン酸の含有量が高い「オレインリッチ」をブレンドしたオリーブ油上市/【役員に聞く】山口龍也取締役常務執行役員
――前年度を振り返って
23年度は原料、生産コスト変動分を販売価格に反映しながら、適正販売価格の維持、形成に努めてきた。21年、22年と厳しい環境、業績だったが、収益は回復してきており、23年度の通期見通しを上方修正した。
販売量は、23年度上期は完全には戻らなかったが、下期は人流回復やインバウンド需要による外食需要の回復を受け、前年を上回り推移した。しかしながら節約志向による需要減退は進んでおり、油脂全体の消費量はコロナ前までは回復していない。
――業務用の取り組みを
昨年度に創業以来となる抜本的な組織改革を行い、事業別から販売チャネル別の営業組織に改編した。それによりユーザーが抱える課題、求めるニーズに対し、ワンストップで解決策を提案できる体制となった。新組織のもと、油脂も積極的な課題解決型の営業を推進した。当社は油脂以外に製粉や糖質の事業があり、取引件数は同業に比べて多い。幅広い取引先に対し、チャネル別販売組織で営業活動を進めることで、油脂の提案が課題解決に繋がる機会が広がっていることを実感している。
例えば、半流動性油脂「Sベーカリーオイル」はカレーパンをおいしくするというコンセプトで開発した商品だが、幅広い顧客に提案する中で、特徴的な物性が評価され、フライ用途以外でもさまざまな用途で採用が続いている。
――家庭用の取り組みは
汎用油は原料面では一段落しているが、為替の円安基調、物流費の上昇など厳しいコスト環境が続いており、適正価格での販売を続けていく。
また、スペインで2年連続オリーブが不作となり、世界的にオリーブ油の価格が大暴騰した。これを受け、直近では5月に価格の改定を行う。
お客様にご迷惑をかける状況が続き、業界全体ではダウンサイズ化や、風味や味を損なわないように他の油種とのミックス商品を開発、各社が上市している。当社はオリーブ油と同様にオレイン酸の含有量が高いヒマワリ油「オレインリッチ」を商品として持っている。オリーブ油の持つ健康イメージはオレイン酸含有率の高さだと考えているが、「オレインリッチ」をブレンドすることで、オリーブ油の健康面にひけをとらない商品を開発した。風味を損なわず、味も非常にまろやかになり、オリーブ油に匹敵するテイストが出せることも発見した。「オレイン酸たっぷりのひまわり油&オリーブオイル」として6月に上市を予定している。価格はオリーブ油よりも抑えられ、供給面、価格面においても満足してもらえる商品だと考えている。
〈油種ポートフォリオ拡大で業務用2品を開発、こめ油とコーン油とのブレンド油〉
――今年度の施策について
ユーザーから要望があり、今まで温めていたものの中から業務用の新商品を2品上市する。一つは、炊飯ベンダーや冷食メーカー向けに、炊飯時に添加することで、低温度帯の流通でもご飯の味、風味を落とさず、おいしさを保てる炊飯油「こめコート」だ。低温流通の中で、米が老化したり、バサついたりする悩みを抱えられていたお客様に最適で、スーパーマーケット・トレードショーでも好評だった。
もう一つは、量販店のバックヤードや外食店向けに、フライ製品のおいしさを向上させつつ、フライヤー周りの油汚れがつきにくいため掃除がしやすいフライ油「キャノーラCK-UP」だ。コロナ以降、量販店や外食店は人手不足に悩んでおり、人手をかけずに品質の高いフライ製品を提供したいという要望を具現化した。
「こめコート」はこめ油、「キャノーラCK-UP」はコーン油とのブレンド油だ。この数年間、ボーソー油脂の子会社化、辻製油との資本業務提携により、油種のポートフォリオを大きく広げた部分を具体的に製品に落とし込み、製品開発につながっている。両商品とも今年度の上期中に上市する予定だ。
――パナマ運河の水位低下の影響について
コスト面では海上運賃の上昇が発生している。品質面でのリスクもやはり懸念されている。喜望峰ルートは赤道を2回通り、外気温の上下動による品質劣化の懸念がある。現時点では、当社に向けての大豆本船の品質劣化の事例はないが、今後も注視していく必要がある。
まだ先にはなるが、パナマ運河の水位が回復し、通常通り通峡可能になった時の出口戦略も検討する必要がある。現在は航路延長ベースで原材料調達を計画しているが、急に通峡可能となって本船到着が早まると、受け入れサイドとしてはサイロのスペース不足が想定される。当社もサイロ業を行っているのでその点は懸念している。
〈大豆油糧日報2024年5月1日付〉